【発達コラム】子どもとの関わり方・褒め方~発達支援事業所てらぴあぽけっと市が尾~

早期療育の基本となる「ABA理論」とは?また、ABA理論に基づき、実践できるママと子どもの行動について伺いました。

ABA理論とは

応用行動分析学(Applied Behavior Analysis)の略で、早期療育の基本となる治療方法です。
自閉症の子、発達に心配のある子の行動を一つ一つ切り離し問題を解決する分析方法で、代表的な治療法とも言えます。
それは、お子さまの行動の改善だけではなく、親御さんの「育てにくさ」を和らげるためでもあります。早期療育を掲げるために厚生労働省では「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」に重点を置いています。
厚生労働省「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」

ABA理論から考える子どもとの関わり方

子どもの行動分析

子どもの行動にフォーカスし分析します。減らしたい行動、増やしたい行動、現状維持したい行動を判断し方向性を決めていきます。増やしたい行動と減らしたい行動は表裏一体のことが多く、連動させて伝えることで行動の改善がみられる場合があります。
例えば、
■廊下を走っている子の行動に対する分析
×減らしたい行動:廊下を走ること
〇増やしたい行動:廊下を歩くこと

■机を叩いている子の行動に対する分析
×減らしたい行動:机をたたくこと
〇増やしたい行動:手を膝の上に置くこと

というように、減らしたい行動「〇〇はダメ!」に加え、増やしたい行動「何をしたら良いか」も具体的に伝えることで『教える』という意味になります。行動ひとつひとつに対して、どれが「現状維持か、やめて欲しいことか、増やして欲しいことか」に当てはまるか考えてみましょう。

子どもにとっての報酬と褒め方

嬉しいこと=報酬を得られることで子どもの行動は変わってきます。報酬が嬉しくて、その行動をまた取るようになり、良い行動が増えてきます。
お子さまによって報酬は異なります。「ママに褒められる・ママの笑顔」「オモチャ」「食べ物」など、その子にとっての報酬が何かも注目してみましょう。
オモチャや食べ物の場合、それを与えるときのママの言葉、表情、声のトーンなど、嬉しい表現をセットにしてください。そうすることで、大好きなオモチャや食べ物をもらえるに値する価値の表現=良いこと、と判断するようになり、ママの表情だけでモノがなくても報酬と判断することに繋がっていきます。

子ども特有の報酬の一つに、「注目してもらう」ことがあります。
例えば、店内で走り回る子どもに「ダメじゃない」と何度注意しても治らない…と悩んでいるママはいると思います。それは、子どもにとってママに注目されていると感じているのかもしれません。そのような時には、周りの安全を確保した上で無視をすることも必要です。無関心なのではなく、無反応という意味での無視をしてみましょう。

さまざまな報酬がありますが報酬を与えるタイミングはとても重要です。店内を走り騒ぎだしてから、止めてほしくてモノをあげると、子どもは「騒げば手に入れられる」と認識してしまいます。注意されたことよりも、最終的に報酬がもらえたという結果にフォーカスしてしまうのです。子どもの限界値を探りながら、騒ぎ出す前に「ママと一緒に歩けてるからご褒美あげようね」と先に与えてみるのも良いでしょう。

「できない」に隠れた「できている」部分を探す

ズボンを履くことができません。と相談されることがあります。『ズボンを履く』には、これだけの動作があるのです。
1.ズボンの前後を探す
2.前後左右正しい方向に持つ
3.入り口から片足を入れる
4.入り口からもう片方の足を入れる
5.ズボンを引き上げる
6.インナーのシャツを入れる
7.Tシャツを下げる
子どもがすべてできないのか、どの部分はできているのか見てあげることも大切です。できることは褒め、できない部分だけを手伝い習得することを目指しましょう。丸ごと「できない」と思ってしまうことが多いですが、一つ一つの行動を分解してできることを探してあげましょう。

褒めるということ

良い行動をしているときには毎回大げさにでも褒めましょう。ママの中で「昨日もできたのだから当たり前」と思ってしまうと、せっかく習得できたことがママの無反応により、またできなくなることがあります。昨日や一昨日まではできたのに急にできなくなった時、そのようにママに褒めてもらえてないから必要ないと判断している可能性があります。ママの中では「もうこれくらいできる年齢のはず」と思ったとしても習慣となるまで同じタイミングで何度も褒めてあげましょう。

日常生活で活用できるお子さまとの関わり方についてお話しましたが、それにはママやご家族の体力や忍耐も必要です。発達事業所は「子どもの発達を促す」施設ですが、ママやご家族の「育てにくさ」を和らげて欲しいためにもあります。もっと具体的な個別相談や定期的な講習会も行ってますので、一人で抱え込まずに相談にいらしてください。些細なことでも相談に乗ります。

お話を伺ったのは

株式会社 OHANA 代表取締役 関谷友子さん