昭和女子大学附属昭和小学校のキャンパスには、子どもたちの素朴で、かつ鋭い「問い」が溢れています。2024年度、産声を上げた「探究コース」。
ここでは、子どもが自ら問いを立て、思考を巡らせ、学びを能動的に広げていくプロセスが何よりも尊重されています。 身近な自然や実体験を起点とした学びは、どのように深まり、未来へとつながっていくのか。探究コースを牽引する工藤豪先生に、日々の実践と、その先に描く展望についてお話を伺いました。

昭和女子大学附属昭和小学校の工藤豪先生
問いはどう育つ?1・2年生の学びのつながり
知識の前に「豊かな土」を。大人が答えを教えないことで育つ子どもの好奇心
探究コースの学びは、まず「外へ出る」ことから始まります。1年生の春、子どもたちが校庭の片隅で見つけた一匹のダンゴムシ。「これは何だろう」「どうして丸くなるの?」「足は何本?」――自然に湧き上がる疑問が、子どもたちの瞳を輝かせます。
この段階で大切にしているのは、教師がすぐに答えを教えないこと。教員が正解を提示してしまえば、そこで思考は止まってしまいます。
「どうしてだと思う?」「どうやって確かめられるかな?」と問い返しながら、子どもが自分で考え始めるのを待ちます。
その場で観察したり、教室に戻って図鑑で調べたり、友達と見つけたことを共有したりする中で、「他の虫はどうだろう」「どこに住んでいるのだろう」といった問いが連続して生まれ、学びがつながっていきます。
この「待つ」時間の中で、学びは少しずつ“自分のもの”になっていきます。

校庭で見つけた小さな生き物から生まれる「なぜ?」。先生はあえて答えを教えず、子どもたちが自ら調べ、考え始めるのをじっと待ちます(昭和女子大学附属昭和小学校)
1年生で生き物への興味を広げた子どもたちは、2年生になると、その視点を「環境」へとつなげて広げていきます。虫たちが集まる「インセクトホテル」づくりは、その象徴的なプロジェクトです。
「虫はどんな場所に集まるのか」「植物とどのように関わっているのか」といった視点で、「竹」をテーマに、虫が集まる環境「インセクトホテル」を制作しました。
実際に竹を切り出し、虫が入りやすい構造を考えながらホテルをつくり、校内に設置。その後も「本当に虫は来るのか」を確かめるために何度も観察に訪れ、「穴の大きさによって集まるお客さん(虫)が違う!」と大発見を誇らしげに報告してくれます。

「お客さん(虫)、来てくれるかな?」とドキドキの設置タイム。自分たちで竹を切り出し、虫が入りやすい形を一生懸命考えました(昭和女子大学附属昭和小学校)
また、森をテーマにしたクラスでは、奥多摩まで足を運び、実際の森林や林業の現場を見学するなど、学びのフィールドは教室の壁を軽々と越えていきます。
1年生で芽生えた興味は、2年生で別のテーマとつながりながら広がり、学びがより立体的になっていきます。こうした連続性のある学びこそが、昭和の探究の真髄です。
体験と発信で深化した「昭和っ子の研究」
教室を飛び出し、本物に触れて五感で深める自分だけの探究
こうした日々の探究の積み重ねが、1年を通して取り組む「昭和っ子の研究」へとつながっていきます。
探究コースの導入以降、この活動はより「体験型」へと進化しました。これまでも研究活動は行われていましたが、現在はクラス単位で外に出て観察や調査を行う機会が増え、子どもたちが実際に体験しながら学ぶ場面が広がっています。
「昭和っ子の研究」では、学年ごとのテーマをもとに、子どもたちが自分の興味に応じてテーマを絞り、調べ、深めていきます。例えば「虫」というテーマの中でも、ダンゴムシやバッタ、蝶など、それぞれ関心のある対象に分かれ、観察や調査を重ねていきます。 じっくりとスケッチしたり、動画で記録したり。例えば「バッタ」一つとっても種類による跳躍の違いなど、子どもたちの関心は驚くほど深まっていきます。

探究フェスタでは、自分たちが夢中になった「虫の世界」を、クイズや体験コーナーで保護者の方に全力でプレゼンします(昭和女子大学附属昭和小学校)
9月には「探究フェスタ」が行われ、保護者に向けて自分たちの学びを伝える機会があります。虫を実際に触ってもらう体験型の展示を考えたり、クイズやパズルを用意したりと、「どうすれば相手に伝わるか」を子どもたち自身が工夫します。
さらに後期、1月の報告会では、1年間の学びをもとに、より発展的な表現へとつなげていきます。
例えば、虫の動きを再現するロボット制作。プログラミングを駆使して「蝶の羽ばたき」や「バッタの跳ねる動き」をどう表現するか試行錯誤を繰り返し、うまくいかなかった点や改善の過程も含めて、自分の言葉で発表します。写真や記録をもとにスライドを作成し、「いつ・何を調べ・どう考えたか」という学びの過程を伝えていきます。

観察して気づいた「体のひみつ」をプログラミングで再現。失敗しても「次はこうしてみよう!」と、挑戦のサイクルは続きます(昭和女子大学附属昭和小学校)
このように昭和っ子の研究では、「体験 → 調べる → 試す → 伝える」というサイクルを1年間かけて繰り返していきます。その中で、子どもたちは単に知識を得るだけでなく、「自分で考え、表現する力」を身につけていきます。
自分の「問い」が、未来へとつながっていく
学年ごとに積み上がる、問いと学びのステップ
1・2年生で大切に育てた「知りたい」「やってみたい」という真っ直ぐな気持ち。それは、これから先の学びを支える、何より強固な土台となります。
続く3・4年生では、自分の問いに対して「どう考えるか」「どう近づいていくか」といった考え方を磨きます。すぐに答えが見つからなくても、粘り強く考え抜く力。そして、自分一人では届かない場所に、仲間との「協働」によってたどり着く喜び。これまでの体験や探究の積み重ねを、教科の知識とも結びつけ、さらに学びを深めていきます。

「問い」の先にある未来を語る工藤先生(昭和女子大学附属昭和小学校)
そして5・6年生になると、学びの舞台はいよいよ社会へと広がっていきます。 自分の興味が社会とどう呼応しているのか、自分はこの世界でどう生きていきたいのか。
「問い、深め、社会と繋ぐ」という6年間にわたる探究の旅を終えたとき、子どもたちの手には、自ら未来を切り拓く確かな力が握られていることを信じています。