【2026新渡戸文化小学校の校長インタビュー】 「感謝」「つながり」「成長」。 6年間の学びが結実した卒業式

明治時代に世界へのかけ橋として尽力した新渡戸稲造博士。その精神を継承する新渡戸文化小学校は、自分と周りの幸せをつくる人(Happiness Creator)の育成を掲げています。

「どの子も、わが子」――。教職員全員が、全児童を家族のように見守る温かな校風の下、2020年の着任以来、校長として子どもたちと共に歩んできた杉本竜之先生にお話を伺いました。

お話


新渡戸文化小学校校長
杉本 竜之先生

教員も、生徒も、みんなイキイキ! それが新渡戸流です

「教育は、人を幸せにするものでなくてはならない。そのためには、教員も生徒も常に自由な発想で意見を出し合い、よいアイディアはどんどん実践していこう!」
私は常々このように伝えてきました。教員がイキイキしていれば、それは生徒に伝わり、生徒も主体的に学校生活を送れるはずですから。

その一つの到達点が、2025年度の卒業式でした。6年生の担任の先生たちが提案してきたのは前例のないユニークなスタイル。卒業生と保護者が離れて座るのではなく、親子が隣同士で並んで座るというものでした。

最初は驚きましたが、教員の熱意に打たれ、すべてを任せることにしました。今回は、その卒業式の話から、本校が大切にしていることをお伝えしたいと思います。

卒業生と保護者が離れて座るのではなく、親子が隣同士で並んで座るスタイルの卒業式(新渡戸文化小学校)

保護者への手紙やスピーチを通し、「感謝」や「つながる」思いを表明

「つながり」「感謝」「成長」。これは、今回卒業式を迎えた6年生が、5、6年時に掲げていた学年テーマです。子どもたちはみな、この3つを自分のものにしようと2年間頑張ってきたことでしょう。ある意味、卒業式はこれらの集大成の場だったと思っています。

式が始まる前、保護者が席に着くと、そこには一通の手紙が置かれていました。子どもたちが、6年間見守ってくれた保護者への思いや未来への抱負などをつづった、世界に一つだけの手紙です。普段はなかなか口に出して言えない「ありがとう」の言葉。それを文字にして伝えることは、立派な「感謝」の表現(アウトプット)です。目頭を熱くする保護者の皆さんも、我が子の成長を強く実感したことでしょう。

卒業式代表の言葉(新渡戸文化小学校)

また、門出の言葉に代えて、生徒の代表5人がスピーチをしました。子どもの主体性を尊重し、担任は一切事前に内容をチェックせず、当日までスピーチの内容を知りませんでした。

ある児童は、スタディツアーで訪れた岩手県大槌町での経験を語りました。修学旅行的な位置づけのスタディツアーに、東日本大震災で大きな被害を受けた大槌町を選んだのは、生きる意味や幸せとは何かを考えてほしかったから。
その旅を今も大切に心に留め、大槌町に想いを馳せる。まさしく「つながり」を自分ごととして身につけてくれたことを実感しました。

大槌スタディツアー(新渡戸文化小学校)

学びを「アウトプット」する力。「大きな家族」の元から未来へ

卒業式の終盤には、「また会おう」の気持ちを込めて、「群青」を全員で斉唱。震災の翌年に福島県の中学生の言葉から生まれたこの歌を、この6年生なら歌詞の意味をきちんと理解して歌うことができる。そう思い、担任は子どもたちに「群青」を紹介しました。子どもたちはその思いを受け止め、歌うことを選んだのです。これも、大槌町や震災で被害を受けた方々全員に「つながる」気持ちからでしょう。

卒業式で「群青」を合唱(新渡戸文化小学校)

私は常々、「学んだことを、どうアウトプットしていくかが大事」と話しています。子どもたちがスピーチや歌を通じて、壇上で堂々と表現する姿――これこそが、本校が目指す「学んだことを発信し、つなげていく力」の形だとしみじみ感じました。
フィナーレは、親子で手をつないで退場。これも、この先、年頃になったら親子で手をつなぐ機会なんてないのでは、と担任からの発案です。

卒業式保護者と退場(新渡戸文化小学校)

もう一つ、印象的だったのは、退場時に、担任が子どもたち一人一人の肩に手を置き、言葉をかけていたシーンです。「扉を開けて、さぁ行きなさい!」「君なら大丈夫!」そんな思いを込めたようですが、私まで胸が熱くなりました。
「小さな学校、大きな家族」――あの日、あの場所には家族の愛が溢れていました。

新渡戸文化で学んだ「つながり」と「感謝」を胸に、彼らはこれからも、自分と誰かの幸せを作り続けるHappiness Creatorとして歩んでいく。その確信を得られた最高の門出となりました。