【2026森村学園初等部の学び】情報科「相手を想像する力」を育む、先進的なものづくり教育とは?

森村学園初等部に入学したばかりの1年生。その小さな手で一人ひとりがiPadを開き、瞳をキラキラと輝かせながら「タッチの練習」に励んでいました。同校では、教育の3つの柱の1つとして、先進的な情報教育に注力しています。

今回は「単なるプログラミングスキルの習得にとどまらず、社会で不可欠となる協調性や問題解決能力、そして他者への思いやりを養っていきます」と語る情報科の榎本昇先生にお話を伺いました。

森村学園初等部 情報科 榎本 昇 先生

「1年生のICT授業では、まず『コンピューターは人間が指示した通り、
どこまでも忠実に動くものである』という基本を体感的に学んでいきます」

情報の授業は1年生からスタート!
キラキラと瞳を輝かせる子どもたち

「ここを優しくタッチしたら、画面の中にカラフルな星がたくさん出てくるよ」「たまごからどんな生き物が生まれるか、自分で想像して自由に描いてみよう!」――メディアルームに榎本先生の温かい声が響くと、1年生の児童たちの顔にパッと笑顔が弾けます。隣のお友達と「見て見て、できたよ!」と嬉しそうに教え合う子もいれば、画面いっぱいに黙々とカラフルな星を散りばめていく子もいます。

この日のICT(情報)授業は、画面に優しく触れる「タッチの練習」からスタート。笑顔あふれるメディアルームでは、1年生の児童たちが驚きと喜びに満ちた表情でiPadを操作していました。(森村学園初等部)

「実は、プログラミングの授業は今日でまだ2回目なんです。一見するとシンプルな画面操作に見えますが、子どもたちは『コンピューターは人間が指示した通りに、どこまでも忠実に動く』という大原則を、遊びの延長線上で体感的に学んでいます」と榎本先生は目を細めます。

児童たちが夢中で画面を操作している最中、榎本先生が「はい、一度お話します」と全員に声をかけました。すると次の瞬間、子どもたちは一斉にiPadの画面をくるりと裏返し、姿勢を正して真っ直ぐ前を向いたのです。その目には「次は何が始まるんだろう?」というワクワクとした期待が満ちていました。

「このように人の話をしっかりと聴く力(傾聴力)がある子は、高学年になってから飛躍的に学力を伸ばします。iPadというツールを通じて、単なる技術だけでなく、集団の中で大切な協調性やメリハリ、そして自ら課題に向き合う姿勢をじっくりと育んでいきたいですね」

榎本先生の説明を一言も聞き漏らすまいと、真剣な表情で耳を傾ける子どもたち。ICT授業を通じて「楽しむときは全力で楽しみ、聴くときは集中する」という静と動を織り交ぜた学びが自然と身についています。(森村学園初等部)

プログラミングをツールに、社会で生きる「相手を想像できる力」を

文字情報を一切使わないノーコードの教材を用い、まずは直感的なタッチや描画から始まった1年生のプログラミング学習。段階を追ってステップアップしていくカリキュラムの中で、最も重視しているのは「コンピューターの仕組みを正しく理解すること」だと言います。

「正しい指示であっても、間違った指示であっても、コンピューターは打ち込まれた内容をそのまま忠実に実行します。だからこそ、自分の思い通りに動かなかったときに『どこが違っていたのだろう?』と原因を探るおもしろさが生まれるのです。この低学年での試行錯誤の体験こそが、将来のクリティカルシンギングの強固な土台を築きます」と榎本先生。                                                         「学年が上がるにつれて扱うプログラムや表現方法はより高度で複雑なものへと進化していきますが、すべての根底にあるプログラミングの3大原則(順次処理・条件分岐・ループ)は共通です」。

さらに森村学園のICT教育が見据えているのは、技術の習得そのものではありません。榎本先生はさらに踏み込んだ教育の本質について、次のように語ります。

「例えば高学年で行うアプリ開発などのものづくりでは、最終的にそれを使う『ユーザーの視点』に立ち、相手に合わせた見やすいデザインや、分かりやすい表現方法を選択しなければなりません。このプロセスを経験することで、社会生活において極めて重要となる『共通解(お互いの落としどころ)』を見出す力を育んでほしい。プログラミングという学びを通じて、相手を思いやり、相手の立場を想像できる人間力を育てることが、私たちの真のゴールです」

直感的に花を咲かせる操作の裏側には、実はプログラミングの基本である「順次処理・条件分岐・反復ループ」のエッセンスが。6年間の系統的な学びを通じて、子どもたちは自らのアイデアを表現する力を洗練させていきます。(森村学園初等部)

企業の映像・アプリコンテストへ挑戦!
「子どもでも勝負できる」自信を

こうした主体性と創造性を発揮する実践の場として、高学年を中心に外部の本格的なコンテストへも積極的に挑戦しています。その一つが、毎年有志を募って参加しているパナソニック主催の映像コンテスト(KWN)です。

子どもたちは半年以上もの長い期間をかけ、チームを組んで一つの映像作品を作り上げます。その過程では、学外へ飛び出して取材やインタビューを重ねるなど、ジャーナリズムやチームワークの難しさと楽しさを学んでいきます。

過去には、地元・横浜にある桜の木をテーマに、日米の歴史的なつながりを深く掘り下げた作品や、日本の伝統技法である「金継ぎ」を通じて物を大切にする精神を表現した作品などが高い評価を得ました。

「桜のプロジェクトでは、納得がいくまで実に1年半の歳月を費やしました。子どもたちは自分たちで問いを立て、探究的に学びを深めていく本物のおもしろさに完全に魅了されていましたね」と榎本先生は振り返ります。

また、スズキ株式会社と連携し、「インドで普及が進むバイオガスで動く車を、日本の子どもたちに広くアピールするための知育アプリを開発する」という高度なミッションにも挑戦しました。3年生から6年生が参加し、全国から400作品以上が集まった大人も参加する大規模なコンテストでしたが、なんと同校の3年生の児童が見事に受賞を果たしたのです。

スズキ株式会社と株式会社しくみデザインによる「第2回 SUZUKI×Springin’コンテスト」で受賞した子どもたち。スズキ株式会社は、インドにおいて牛の糞尿を活用したバイオガス事業に取り組んでおり、その取り組みを題材に、『うんこ×くるま』をテーマとした子ども向けゲームプログラミングコンテストを実施しています。(森村学園初等部)

「この挑戦を通じて、子どもたちは『相手のことを想像し、アイデアをかたちにする楽しさ』を深く実感したはずです。それと同時に、『子どもであっても、アイデア次第で社会の役に立ち、世界を豊かにできるんだ』という、生涯揺るぎない大きな自信を手に入れたに違いありません」。

iPadの画面を指でなぞりながら、次々に新しい表現を生み出していく子どもたち。榎本先生の声掛けに応えながら画面にカラフルなお花が咲き誇ると、教室内には歓声と満面の笑みが広がりました。(森村学園初等部)

最先端のデジタルファブリケーションと、
学校と家庭がともに育む安心・安全なICT環境

森村学園では、国が推進する「GIGAスクール構想」に先駆けること数年、2017年という極めて早い段階から児童1人1台のiPad環境を導入していました。そのきっかけとなったのは、ある一人の児童が放った「世の中にはこんなに便利な道具があるのに、どうして学校では使っちゃいけないの?」という純粋な疑問でした。

子どもの知的好奇心に真摯に応える形でスタートしたICT(情報)教育は今、榎本先生をはじめ世界水準のスキルを持つ「Apple Distinguished Educator(ADE)」認定を有する3名の教員陣によって、日々アップデートされています。

最先端の学びを支える拠点である「メディアルーム」には、iPadだけでなく、3Dプリンターやレーザーカッター、大型のiMacといったプロ仕様の高度な機器が完備されています。子どもたちはデジタルデータを作成し、これらの機材を自在に操作して、オリジナルのハンコなどを作成するなど、教科横断的な学びの場としてフルに活用されています。

マウスを置くためのユニークなアクセサリー。児童が自らデータ作成を行い、3Dプリンターを使って形にしました。(森村学園初等部)

「ただし、iPadはあくまで学びを深めるための素晴らしい『ツール(道具)』に過ぎず、それだけに依存してほしくはありません」と榎本先生は語気を強めます。例えば、電車での通学時間などはタブレットを開かず、「あえて何もしない余白の時間」として車窓の風景を眺めるなど、デジタルデトックスの意識も同時に指導しています。

学園では、児童の端末の利用状況を教員側で適切にモニタリングできる先進システムを導入しているほか、家庭でのルール作りを徹底するため、夜9時以降は学習以外のアプリが自動的に非表示になるロック機能を設定。さらに各家庭の教育方針に合わせた個別フィルタリングも可能にしています。学習効果を最大限に高めつつ、子どもの健康的な生活バランスを損なわない、厳格で温かい仕組みづくりが、森村学園のICT教育の強固な信頼性を支えています。

お話を伺ったのは

>森村学園初等部 情報科 榎本 昇 先生