【2026校長インタビュー】学びの主役は子どもたち。相模女子大学小学部の“体験からの学びを通して自己肯定感を育む教育”とは?

上級生に声をかけられ、嬉しそうに立ち止まる低学年の子どもたち。学年を越えた交流は相模女子大学小学部のあちらこちらで見られます。

「毎日会いたい友だちがいる、毎日学ぶよろこびがある」をスクールコンセプトに掲げる相模女子大学小学部。子どもたちの成長に欠かせないのは、実際に身体を動かし、体験することで得られる学びや感動。それが、この学校の教育に一貫して流れている考え方です。

独自の教科「つなぐ手」を通した多様な人との出会い、動物のお世話から学ぶ命の大切さ、そして宿泊行事や運動会など、年間を通して子どもたちは数々の行事や体験をします。今年度から校長になられた小勝亜希子先生に、こうした相模女子大学小学部の教育の本質をうかがいました。

相模女子大学小学部 校長 小勝亜希子先生

「授ける」から「支える」へ。
専科制と少人数制がつくる学びの土台

小学校の6年間は、子どもたちにとって「人生の土台」を育む大切な時間です。日々の授業も、教員が一方的に知識を「授ける」のではなく、学びの主体はあくまで子どもたち。私たち教師はそれを支える伴走者でありたい、そんな想いで学校づくりに取り組んでいます。

私は2026年度の4月に校長に着任しました。これまで18年間、さまざまな学年の担任を務め、子どもたちと接する毎日を送ってきました。校長になった今もできるだけ子どもたちと触れ合いたいという思いから、毎朝、玄関で子どもたちを迎えて「おはよう」のあいさつを交わしています。

校長室もできるだけオープンな空間であることを心掛けており、子どもたちが思わず校長室の扉をノックしたくなるような環境を整えています。

校長室の扉にかかった小さなホワイトボードには、毎週、季節や時事にちなんだクイズが手書きで掲示されています。子どもたちとの触れ合いを大切にする、校長先生ならではの素敵なアイデアです。

卒業生が教師として戻ってきてくれるケースも多いです。2026年度の新任の先生や秋に迎え入れる予定の教育実習生も本校の卒業生で、かつては教え子で、今は同僚となりました。その中の一人は、「私は小学校の先生になりたかったのではなく、相模女子大小学部の先生になりたかったんです」と。その言葉を聞いたときは、子どもたちのために私たちがやってきたこと、大切にしてきた思いが確かに伝わっていたのだと感じ、とても嬉しくなりました。

先生との距離感の近さは少人数制ならでは。一人ひとりに寄り添い、きめ細やかに指導します。

「つなぐ手」が育む、社会で生きる心の力

本校には「つなぐ手」という独自の教科があります。社会との関わりを通して「生きるための力」を育む、いわば心の教育プログラムです。「心をつなぐ」「伝統文化をつなぐ」「命と食をつなぐ」「夢をつなぐ」という4本の柱で取り組んでいます。

3年生の「つなぐ手」では、「難聴の方との交流」を行います。子どもたちは「耳が聞こえない」とはどういうことかを学び、耳の不自由な方との交流方法を考えます。そして、手話で自己紹介をしたり、タブレットや筆談を使って質問をしたりするなど、自分たちにできることを一生懸命に考えながら、絆を深めます。

前回の交流の最後には難聴の方から子どもたちに向けて「耳が聞こえないことは不幸ではない。こうしてみんなと出会えた、幸せな時間を持てたのだから」というメッセージをいただきました。

独自の教科「つなぐ手」では、3年生が難聴の方との交流を通して多様性を学び、他者を理解する心を養います

今年の2月、子どもたちが11年間大切に飼育していたヤギの「バニラ」が旅立ちました。子どもたちにはかけがえのない命の尊さを学ぶ時間として、看取ったあとの時間を大事にしてほしいと考え、すぐに新しいヤギを迎えることはしませんでした。

4カ月が過ぎたころ、2年生から届いたのは、「ただかわいいから飼いたいんじゃない。学校にヤギがいるとみんなが元気になり、笑顔になれるから飼いたい」という一人ひとりの思いがこもったお手紙でした。子どもたちの成長を感じ、その思いをしっかりと受け止めました。

2年生が自主的に書いたというお手紙には、ヤギを飼って学校全体を笑顔にしたいという気持ちが紙いっぱいにつづられていました。

そして、9月中旬に新しい子ヤギを迎えました。全校児童の投票により、名前は「ホイップ」に決まり、さっそく嬉しそうに小屋のお掃除をしたり、お世話をしたりする児童たちの姿が見られています。

9月中旬に新しい子ヤギ「ホイップ」を迎えました。当日、代表として総出でお出迎えした2年生は、お世話になっている牧場主さんから「1歳4か月、おとなしい性格の美人さんだよ!」と紹介され、大喜び。他学年の児童や中高の生徒、幼稚部の子どもたちも続々と会いに訪れます。

運動会も、海も、雪山も。
全力で挑戦する楽しさを味わう1年間

本校では1年を通してたくさんの学校行事があり、子どもたちが主役として全力を出し切る機会をたくさん用意しています。

象徴的なのは、5月の運動会。全校児童が2曲分のダンスを披露する「全校演技」は、ゴールデンウィーク明けからわずか2週間で仕上げます。高学年が先に振り付けを覚え、縦割りのペアの低学年に教えながら仕上げていくのですが、子どもたちの集中力には目を見張るものがあります。2026年度の運動会本番は欠席児童ゼロで、全校児童揃って保護者が見守る中で全校演技を行うことができた記憶に残る一日になりました。

全国的に削減される傾向にある水泳や持久走も、本校では変わらず継続しています。5年生の臨海学校では、足の届かない海での遠泳にも挑戦。冬にはスキー学校もあります。初めてスキーを経験する児童も多いですが、2日目にはみんなゲレンデを滑れるようになります。

私たち教師も、現地のインタストラクターと共に、チームの一員として共に頑張る姿を見せることで、子どもたちも安心してチャレンジできるようです。ほかにも、ブリティッシュヒルズでのイングリッシュキャンプや富士山自然体験学校など、教室を飛び出した環境での学習体験を大切にしています。

1年生から6年生までが一丸となって披露する「全校演技」。互いに教えあい、励ましあいながら、わずか2週間でつくりあげます。

生き抜く力を育てる「トラブルこそチャンス」の視点

縦割り活動も、本校が大切にしている取り組みのひとつです。掃除は縦割りチームで行い、1年間同じメンバーと毎日顔をあわせることで、家族のようなあたたかい居場所になっていきます。                           「上級生にしてもらったことを、今度は自分が下級生にしてあげたい。」                         そんな気持ちが自然と育ち、縦割りだけでなく、委員会や当番活動を通して「誰かの役に立てている喜び」を実感することにもつながっているようです。

異学年でチームを組み、日々のお掃除や行事など、様々な活動を共にする縦割り班。学年を越えた強い絆を生み、思いやりの心を育みます。

失敗やトラブル、困難への向き合い方も、本校が大切にしている考え方のひとつ。私はそれを「トラチャン(トラブルこそチャンス)」という合言葉にしています。子どもたちがつまずいたときこそ、学びのチャンス。まずはその子なりの思いを受け止めて耳を傾け、そこからやさしく学びへと導いています。

こうした失敗から学ぶ経験、困難から立ち直る経験の積み重ねが、子どもたちが自信をもって生き抜いていく力になると信じています。この思いは、保護者のみなさまにも共有していただき、ともに子どもたちを支えていただければ嬉しく思います。

このたび、小学部は、新校舎を建設することになりました。また、それにあわせて全学年2クラス制となる予定です。よりアットホームで一人ひとりに寄り添う教育を進め、これからも、ありのままの自分を尊重する「自己肯定感」、自らを信じる「自己効力感」、誰かの役に立つことを喜びと感じる「自己有用感」をもてる子どもたちを育んでいきたいと考えています。

「『トラチャン』を合言葉に、子どもたちの失敗に寄り添い、学びにつなげたい」と語る小勝校長先生。