文教大学付属中学校・高等学校では、中学1年から高校1年までGlobal Competence Program(GCP)を実施しています。英語を使って社会課題について考え、仲間と協力する力を育むプログラムです。生徒をよく知る担任の先生も授業に参加し、一人ひとりに寄り添いながら学びをサポート。教材も生徒に合わせて工夫するなど、独自のGCPを展開しています。グローバル教育推進部長の桑原先生に、取り組みの特徴や生徒の変化について伺いました。

文教大学付属中学校 グローバル教育推進部長 桑原 佳代先生
英語は、世界を知り、自分の思いを伝えるためのコミュニケーションツール。
多様な価値観にふれながら、仲間と協力する力を育みます。
英語を学ぶのではなく、英語でつながる。
中学1年から始まるGCP
Global Competence Program(GCP)は、グローバル社会で必要とされる知識やスキル、多様な価値観を理解する力を育むプログラムです。英語を「学ぶ」ことだけを目的とするのではなく、英語を使って社会課題について考え、自分の意見を伝え、仲間と協力しながら答えを探していきます。
文教大学付属中学校・高等学校では、中学1年から高校1年までGCPを実施しています。授業では環境問題や教育、ジェンダーなど、世界で起きているさまざまな課題をテーマに、ネイティブ教員と日本人教員によるティーム・ティーチングで学びを深めます。

中学1年からGCPに取り組んできた中学3年の授業風景。この日は「オリジナル授業を考える」をテーマに、
グループで意見を出し合いながらCanvaでプレゼン資料を作成していました。
以前は、中学2年から実施していたGCP。2024年度より中学1年からのスタートに切り替えました。思春期に入り、人前で発表することへの恥ずかしさが出てくる前から取り組むことで、英語で話すことや自分の考えを表現することが自然なものになっていくと桑原先生は話します。
中学1年から継続して取り組むことで、生徒たちは英語でのやりとりにも少しずつ慣れていきます。学年が上がるにつれて先生の言葉を理解するだけでなく、GCPの目的や仲間と協力して取り組む意味も理解しながら活動する姿が見られるようになりました。

この日の中学2年の授業テーマは「Who is the writer?」。
自分の経験や気持ちを英語で表現し、発表を聞いた生徒たちが誰について書かれた文章なのかを考える活動を行いました。
取材当日の中学2年生の授業テーマは「Who is the writer?(私は誰でしょう?)」。生徒たちが英語でヒントを書き、それが誰かをみんなで当てるクイズに挑戦していました。「My experience(私の経験)」「My message(私からのメッセージ)」といったヒントをもとに、誰について書かれた文なのかを考えます。 『僕のヒーローアカデミア』や『葬送のフリーレン』などの人気キャラクターが次々と登場し、答えが明かされるたびに、教室には笑い声が広がっていました。
生徒を知る担任が伴走。一人ひとりが参加できるGCPへ
同校のGCPにおける大きな特徴の一つが、ネイティブ教員だけでなく、担任の先生も授業に参加していることです。
以前は英語科の教員が担当していましたが、現在は生徒たちをよく知る担任の先生が一緒に授業を行っています。その理由について桑原先生は、「GCPは英語で行う道徳の授業のようなものだから」と語ります。

ネイティブ教員と担任の先生が連携しながらグループワークをサポート。生徒たちをよく知る担任だからこそ、
一人ひとりの様子に合わせた声かけができるのも同校ならではです。

GCPの導入当初から携わってきたグローバル教育推進部長の桑原先生。
生徒に合わせたプログラムづくりに取り組んでいます。
GCPは、単に英語を学ぶ授業ではなく、英語を使って自分自身や社会、多様な価値観について考える時間です。そのため、生徒一人ひとりの性格や友人関係をよく知る担任の先生が関わることで、それぞれの良さを引き出し、グループで協力しながら活動できるよう支えることができます。
また、授業内容をより深く理解できるよう、教材にも工夫を重ねています。導入当初は教材に難しい単語や抽象的な表現が含まれ、英語の理解が壁になることもありました。そこで、普段使用している英語教科書に合わせて単語や表現を調整。英語力に関わらず、テーマについて考えて意見を交わせる環境を整えています。

生徒の理解度に合わせて工夫されたGCPの教材。
英語力に関わらず主体的に参加できるよう、単語や表現を調整しています
多様な価値観との出会いが、世界へ視野を広げるきっかけに
GCPでネイティブ教員が授業を担当する理由は、英語に触れる機会を増やすためだけではありません。異なる文化や経験を持つ先生との交流を通して、多様な価値観にふれることも大きな目的です。
先生たちは、それぞれ異なる国や地域での経験を持っています。授業では先生自身の経験や文化の違いについて話を聞く機会もあり、教科書だけでは知ることのできない考え方に出会うことができます。
「英語で学ぶというよりも、多様なバックグラウンドを持つ先生から学ぶことに意味があります。たまたま共通言語が英語なので、英語を使っているという感覚です」と桑原先生は話します。

取材当日の中学3年生の授業テーマは「オリジナル授業を考えよう」。
“Manners”“Romance”“Tea Ceremony”“Making Games”など、ユニークなアイデアが次々と登場。
ネイティブ教員のアドバイスを受けながら、生徒たちは楽しそうに意見を交わし、それぞれのアイデアを膨らませていました。
授業を重ねる中で、生徒にとってネイティブ教員は英語を評価する存在ではなく、「自分の思いを伝えたい相手」になっていきます。以前担当していた先生のもとへ休み時間に会いに行き、学校生活や日常の出来事について楽しそうに話す生徒の姿も見られるそうです。
英語を正しく話すことだけを目的にするのではなく、相手を知り、自分の思いを伝えようとする経験を積み重ねることで、世界の人々とつながるためのグローバルマインドを育んでいます。