【2026特長ある学び】桐蔭学園中等教育学校が「AI教育」と「里山プロジェクト」で育む、未来を生き抜く力

桐蔭学園中等教育学校が2026年度から本格的にスタートさせた「AI教育」と「里山プロジェクト」。

最先端のテクノロジーと、豊かな自然のなかで五感を使ったリアルな体験という、一見すると正反対に思える二つの取り組みは、実はどちらも「自ら考え 判断し 行動できる子どもたち」という同校の教育ビジョンから生まれています。

今回は、これからの時代に欠かせない新たな学びの全貌について、AI教育を牽引する郡司先生と、里山プロジェクトの仕掛け人である橋本教頭先生にお話をうかがいました。

桐蔭学園中等教育学校 教頭: 橋本 雄介 先生(左)/探究科主任: 郡司 直孝 先生(右)

AI教育に込めた想い
「安心なプールでたくさん泳ぐ練習をしてほしい」

生成AIの急速な普及にともない、「これからの時代を生きる子どもたちに、早くから生成AIを利用させたほうがよいのだろうか」とお悩みの方も少なくないでしょう。
桐蔭学園中等教育学校では今年度の1年生から、一人一台のChromebookを導入。安心・安全な環境を徹底して整えた上で、生成AI「Gemini」の活用をいち早くスタートさせました。

「トラブルを懸念して遠ざけておくのは簡単です。しかし、将来社会で活躍する子どもたちを育てる上で、最新テクノロジーを活用できないことはデメリットになりかねません。『今だけ波風を立てたくないから』と蓋をしてしまうのは違いますよね」と郡司先生は語ります。

生成AIを学びのパートナーに。ただスキルを習得するだけでなく、生活をよりよくするための向き合い方を主体的に学びます。(桐蔭学園中等教育学校)

生成AIをどう使うべきか、大人にとっても明確な正解が見えないなかで、同校が選んだのは「正面から向き合おう」という道でした。

「本校で導入している学校アカウントのGeminiは、一般的に利用されているものと異なり、中学生でも安全に使える特別なフィルタリングやルールが敷かれています。いわば、波が比較的穏やかなプールのようなもの。その安全な環境のなかで、まずは泳ぐ練習をたくさんしてほしいのです」。

生徒が主役のルールづくり。校外の大人を招いて行う「六者協議会」を発足

生成AI活用のルールについて、学校側が提示したのは「自分たちの学習や生活をよりよくするために使う」という、たった一つの指針だけでした。
「細かいルールは、あえて生徒たちに委ねています。たとえば『デスクトップ画面を好きなキャラクターにしていいのか?』『トップカバーに好きなシールを貼っていいのか?』など、プライベートなスマホとは異なる“学びのための端末”にどう向き合うべきか、生徒たち自身で考えてルールを作ってほしいのです」と郡司先生は語ります。

生徒が主体となってルールを作る場合でも、教員の顔色をうかがって「先生がOKしそうな無難なルール」になってしまうことが少なくありません。それを防ぐために発足したのが、生徒、保護者、地域、大手IT企業、教育現場のデジタル活用に詳しい有識者、そして教員が参加する「六者協議会」です。

「学校がテクノロジーとどう向き合っているのかを外部に開き、多様な視点からご意見をいただきながら対話を重ねる。これもまた、社会と繋がっていく大切な学びの一つだと考えています」。

生徒、保護者、企業や有識者で行う「六者協議会」で、生成AI活用のルール作りをしています。
(桐蔭学園中等教育学校)

デジタル社会だからこそ大切にしたい、里山での試行錯誤と生きた探究

今年度、AI教育と同時に始動したのが「里山プロジェクト」です。なぜ今、自然体験なのでしょうか。「社会のデジタル化が進むからこそ、実際に土に触れ、木を伐るといったリアルな『手触り感』が不可欠になります」と橋本教頭先生は力を込めます。

昨年度の探究活動において、生徒たちは楽しく取り組んではいたものの、図書室でパソコンの画面に向かうだけで完結して、自身の興味の範囲内に留まってしまう傾向が気になっていたそうです。

伐採した竹で竹炭を作り、マシュマロを焼いて食べました。デジタル社会化が進む中だからこそ、土に触れ、五感を使うリアルな体験を。机の上では経験できない「手触り感のある学び」をすべての生徒に届けていきます。(桐蔭学園中等教育学校)

そこで今年度は、1年生全員が里山をフィールドに探究活動を行うカリキュラムへと発展させるべく、放課後のアフタースクール活動に取り組んでいます。
広大な敷地内にある竹林の整備から始まり、里山内に道を作ったり、地域の方々の協力を得て竹炭を作ったり、椎茸栽培を始めたりと、生徒と教員が一緒に試行錯誤しながらプロジェクトを進めています。正解のない自然のなかでのトライアンドエラーは、パソコンの画面上で経験できるものではありません。

「自然のなかに深く入り、直接触れるリアルな感覚を知っているからこそ、社会に対して『自分は何をするべきか』という強い当事者意識が生まれます。
そこから次々と新しい問いがあふれ出し、探究が自分の人生に必要なものだと腹落ちしていく。そうして初めて、内側から湧き出る学びの意欲に火がつくのです」。

「デジタル社会が進む中だからこそ、土に触れ、五感を使うリアルな体験を。机の上では経験できない『手触り感のある学び』をすべての生徒に届けていきます」と橋本教頭先生。(桐蔭学園中等教育学校)

自分らしく生きるための「寄り道」を、一緒にしませんか?

里山プロジェクトでは、生徒たちのふとしたつぶやきから、活動が思いがけない方向へ枝分かれしていきます。
「里山にツルがたくさん生えているのを見た生徒が『これ、何かに使えないかな?』と指さした植物は、実は葛(クズ)でした。もちろん完全無農薬です。
そこから『葛餅を作って食べよう!』というアイデアが生まれ、甘いもの好きな教員も参加するなど、活動の輪がどんどん広がっています」と橋本教頭先生は笑顔で話します。ほかにも、家庭科の授業で干しタケノコを開発して調理実習で活用するなど、当初は想定していなかった展開が次々と生まれているそうです。

広大な敷地のなかに作られた「里山の入口」。土壌調査や自然探索はここから入って行きます。(桐蔭学園中等教育学校)

「効率(タイパ)や対価(コスパ)を求め、誰かが教えてくれる必勝法をなぞるだけが豊かな人生でしょうか?私たちは『仮説通りにいかなくても、寄り道したらもっとおもしろいものが見えた!』という経験こそが、たくましく自分らしい生き方につながると、里山プロジェクトを通して伝えていきたいです」。

里山プロジェクトの仕掛け人 橋本教頭先生。無限の可能性が詰まったプロジェクトを、私たちと一緒に育てていきませんか?ワクワクするような『寄り道』が大好きなみなさんを、お待ちしています」(桐蔭学園中等教育学校)

AI教育も里山プロジェクトも、まだスタートを切ったばかりです。これからどんな未来を描いていくのか、生徒はもちろん、先生方も心から楽しんでいる様子がとても印象的でした。

お話を伺ったのは

桐蔭学園中等教育学校 教頭:橋本 雄介 先生(左)/探究科主任:郡司 直孝 先生(右)