【2026校長インタビュー】高輪中学高等学校が育む、社会とつながる主体性と思いやりの心

東京都港区にある高輪中学高等学校は、創立140年を超える歴史を持つ男子校です。学力の向上とともに、人としての成長を大切にする教育を実践しています。
近年は高輪ゲートウェイシティとの連携をはじめ、生徒たちが学校の外へ活動の場を広げる機会も増えています。こうした経験を通して育まれる主体性と、高輪らしい思いやりにあふれた温かな校風について、平野豊校長先生にお話を伺いました。

高輪中学高等学校

高輪中学高等学校 校長 平野 豊 先生

1300人の日常が紡ぐ、温かな校風と自発の心

高輪ゲートウェイシティとともに広がる、
生徒たちの活躍の場

2020年に高輪ゲートウェイ駅が開業して以来、この地域では新しいまちづくりが進められています。
本校は駅に最も近い学校の一つとして、地域や企業と密接に連携しながら、生徒たちがさまざまな社会活動に挑戦する貴重な機会をいただいています。

直近の動きとしては、2025年9月に開業した高輪ゲートウェイシティ内の商業施設「ニュウマン高輪」のオープニングセレモニーに、本校の「学校PR委員会」の生徒たちが参加しました。さらに、同施設の紹介動画のインタビューにも協力し、地域の歴史や移り変わりについて生徒自らの言葉で生き生きと語る機会をいただきました。

高輪中学高等学校

先取り学習を行う数学の授業。テンポよく進みながらも、教室には笑顔と笑い声があふれ、生徒たちは楽しみながら学んでいます。(高輪中学高等学校)

また、2026年3月には「折紙同好会」の生徒たちが、高輪ゲートウェイシティで開催された大規模イベントに参加しました。高輪ゲートウェイ駅の駅舎が折り紙をモチーフにデザインされているというご縁からお声がけをいただき、駅構内で折り紙のワークショップを実施したのです。

小さなお子さんから大人まで多くの方々と触れ合い、自分たちの探究活動を地域の方々に直接知っていただく、生徒にとっても非常に素晴らしい経験となりました。

ほかにも、「理科研究部」がJR東日本と連携して進めているホップ栽培も定着しています。ここで栽培されたホップを活用して実際のクラフトビールづくりも行われており、地域一体となったサステナブルな取り組みとして大きな広がりを見せています。

高輪中学高等学校

理科研究部が手掛ける栽培スペース。企業や地域とタッグを組んだ、街づくりと連動する共同プロジェクトの現場となっています。(高輪中学高等学校)

JR東日本は、高輪ゲートウェイシティを拠点に「地域とともに新しいまちを創る」という未来志向のプロジェクトを進めています。
本校にもさまざまなお声がけをいただく中で、生徒たちは臆することなく積極的に飛び込んでいます。こうした学外でのリアルな体験を通して、自分たちの活動と社会との関わりを強く意識し、自ら考えて主体的に行動する力が飛躍的に育まれていると確信しています。

高輪中学高等学校

高輪ゲートウェイシティのイベントや施設紹介動画にも参加。学校の外へ活動の場を広げながら、地域とのつながりを深めています。(高輪中学高等学校)

高輪中学高等学校

高輪ゲートウェイシティのイベントで折り紙ワークショップを実施。地域の人々との交流を通して、生徒たちの活動を発信しました。(高輪中学高等学校)

生徒の挑戦から生まれた学校PR委員会。
信頼して任せることで育つ主体性

本校には、生徒が主役となって広報活動を行う「学校PR委員会」があります。この委員会の始まりは、私が校長に就任した2020年、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期でした。

当時は対面での学校説明会や見学会を十分に実施することができず、受験生や保護者の方々に高輪のリアルな様子を伝える術が限られていました。そんな閉塞感のある状況の中、本校の生徒たちが自発的に中心となり、他校の生徒とも連携を取りながら「オンライン説明会」をゼロから企画してくれたのです。

生徒たちが受験生に向けて伝える言葉には、偽りがありません。私たち教員とは違う生徒の目線で学校生活を語ってくれることで、高輪の特徴やあたたかな魅力が、より自然に、そしてダイレクトに受験生の心に伝わっているのではないかと感じています。

高輪中学高等学校

生徒主体で企画・運営する学校説明会。午前・午後合わせて約600人が参加し、教員による説明会より早く満席になることもある人気企画です。(高輪中学高等学校)

こうした生徒たちの自発的な活動はやがて本校の正式な委員会として定着し、現在では「学校PR委員会」として組織化されています。春休みには彼らが主催する学校説明会も開催しており、毎年多くの受験生や保護者の方々にご参加いただいています。

実は教員が主催する説明会よりも先に満席になってしまうこともあるほどの大人気企画で、生徒たちの発信力と熱意に対する世間の関心の高さを肌で感じています。

高輪中学高等学校

説明会の企画や運営も生徒たちが担当。主体的に考え、行動する力が、学校PR委員会のリアルな活動を通してしっかりと育まれています。(高輪中学高等学校)

私たち教員は、生徒の可能性を信頼し、基本的には企画から運営まで彼らにすべて任せています。時には「本番では一体どんな話が飛び出すのだろう」と少しひやひやしながら見守ることもありますが、自分たちで試行錯誤しながら学校の魅力を発信する姿からは、驚くほどの大きな成長を実感しています。

コロナ禍という多くの制約があった環境下でも、生徒たちは「今自分たちにできることは何か」を前向きに考え、主体的に行動してくれました。その逆境の中で培われた主体性や仲間との固い絆は、しっかりと後輩たちへと受け継がれ、現在の文化祭や体育祭といったあらゆる学校行事の盛り上がりにも確実につながっています。

生徒たちが自ら考え、仲間と協力しながら未来を切り拓く姿を見られることは、この6年間で私が最も嬉しく、誇りに感じていることの一つです。

思いやりとおおらかさが息づく、高輪らしい温かな校風

学校の雰囲気や校風というものは目に見えるものではありませんが、それらを最終的に形づくっているのは、他ならぬ生徒たち自身だと私は考えています。
本校には現在、約1,300人の生徒が在籍していますが、その一人ひとりが日々紡ぎ出す行動や言葉の積み重ねが、高輪全体の心地よい空気感を作っています。

私が本校の生徒たちを見ていて日々感心させられるのは、周囲に対する「相手を思いやる気持ち」がとても自然に根付いている点です。
その温かな思いは、毎日の挨拶やちょっとした人との関わり方にもしっかりと表れています。

例えば、廊下ですれ違う際にこちらが何も言わずとも自然と会釈を返してくれたり、「こんにちは!」と元気よく声をかけてくれたりする生徒が非常に多く、そうした日常の何気ないやり取りのなかに、高輪らしいおおらかで温かな校風が息づいていると感じます。

高輪中学校

生徒同士で自然に言葉を交わしながら学ぶ美術の授業。
分からないことがあれば教え合い、アドバイスを送り合う文化も高輪の大きな魅力です。(高輪中学高等学校)

先日も、校内で松葉杖をついた生徒が移動している際、まわりの友人たちがごく当たり前のように歩調を合わせ、荷物を持って付き添いながら歩いている姿を見かけました。誰かに指示されたわけでもなく、特別なこととして誇るでもなく、ごく自然に手を差し伸べている様子に、生徒たちの根底にある本物の優しさを垣間見ました。

また、地域の方から「高輪の生徒さんに本当に助けていただきました」という大変嬉しいお電話をいただいたこともあります。街中で体調を崩して動けなくなってしまった高齢の方を見かけた本校の生徒たちが、自発的に介抱し、無事にご自宅まで送り届けたというお話でした。

もちろん中高生ですから、時には失敗することもあります。しかし、目の前で困っている人がいたら迷わず手を差し伸べられること、人を思いやる優しい心と行動を起こせることは、これからの時代を生きる上でも尊く大切なことだと考えています。

本校では、「大学に進学させるための指導」と同時に、「豊かな人間性を育てる指導」を何より大切にしています。勉強ができるだけでなく、ひとりの人間として魅力的に成長することこそが教育の本来の役割です。

生徒たちのこうした温かな姿や優しさに触れるたびに、高輪が長年大切にしてきた校風が、次世代へとしっかりと受け継がれていることを嬉しく思っています。

お話を伺ったのは

高輪中学高等学校 校長 平野 豊 先生