【2026特長ある学び】本物に触れる「知耕実学」。東京農業大学第一高等学校・中等部の「理科」

明治期の政治家・榎本武揚が設立した徳川育英会の育英黌農業科をルーツにもつ東京農業大学に隣接する、東京農業大学第一高等学校・中等部。教育理念は、本物に触れる「知耕実学」です。

豊かな自然を擁する同校では、生徒がさまざまな実学を通して自らの“知の土壌”を耕し続けています。今回は、体験型の学びを特に重視している「理科」について、理科主任の佐藤将大先生にお話を伺いました。

東京農業大学第一高等学校・中等部

東京農業大学第一高等学校・中等部 理科主任 佐藤 将大 先生

物理の授業を担当する理科主任の佐藤将大先生。「授業を通じて、
物事をさまざまな角度から見て、想像し、表現する力を身につけてほしいと思っています」。

「ものの見方」を身につける物理、実験重視の生物

東京農業大学第一高等学校・中等部の「理科」は、教育理念である「知耕実学」を、「まさに、その通り!」と実感できる授業が多いのが大きな特長です。
例えば、中3の「物理の基礎」の授業。通常は高校1年生から行われるカリキュラムですが、同校では1年間先取りして、中学3年生の段階でスタートします。

この日行われていたのは、「波(波動)について」の入門編。「そもそも波動とは?」という導入にあたり、佐藤先生は、「プロ野球やサッカーの応援に行ったことある人、手を挙げて」と生徒たちに投げかけます。
「盛り上がってきた観客が、スタジアムの席でウェーブを作るのを見たことあるよね。あれが❝波動❞です」という先生の分かりやすい解説に、「あ、なるほど」と生徒たちも納得の表情。

続いて、3名の生徒が横並びで手をつなぎ、ダンスのようにウェーブを作る動作を繰り返します。さらに今度は、男子生徒全員が左向きに長い列を作り、前の人の肩に手を置いて、前から順に大きなウェーブを作っていきます。こうして実際に自分の体を使うことで、「振幅」や「波長」といった物理の知識が、それぞれのなかに自然と吸収されていきます。

東京農業大学第一高等学校・中等部

中3「物理の基礎」の授業。プリントや動画を電子黒板に次々と映し出し、流れるように進んでいく佐藤先生の授業は、「分かりやすい」と生徒たちから人気です。(東京農業大学第一高等学校・中等部)

東京農業大学第一高等学校・中等部

物理では、教室の前に出て体を使って「波」を表現したり、クラスメイトとディスカッションをしたり、机に向かっているだけではないアクティブな授業が展開されていきます。(東京農業大学第一高等学校・中等部)

学びは工夫次第で現れる!

「理科のなかでも、特に物理では、見えないものを想像し、それをどう表現するかが大切になります。授業を通じて、そういった思考力を身につけてほしい」と佐藤先生は語ります。
「そのために、今日の授業のように体を使ってみたりして、『学びは工夫次第で目の前に現れる』『発想ひとつで実学はできる』ということを生徒たちに伝えています」

佐藤先生が物理の授業で生徒たちに配布していたプリントは、先生自ら作成したオリジナル教材です。
「教科書や図録など、何冊もあるテキストをいちいち開くよりは、すべての内容を網羅したプリントを用意したほうがいい、という考えのもとに作っています。生徒たちのためですから、その労力は惜しみません。われわれ教員も日々勉強、日々努力です」と、生徒ファーストの熱い想いを語ってくださいました。

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授業ごとに配布されるのは、佐藤先生手作りのオリジナル教材です。東京農業大学第一高等学校・中等部では、理科に限らず、さまざまな教科で先生が工夫を凝らした独自のテキストを用意しています。(東京農業大学第一高等学校・中等部)

「実学」の実践が未来を切り拓く

一方、「生物」の授業は、とにかく実験や解剖、観察が多いのが特長です。週に4時間の授業があれば、そのうち2〜3回はこうした「実学」に充てられます。

学校の敷地内にある裏庭の雑木林やビオトープ、畑は、生徒たちにとって格好の学び場。例えば、雑木林にある「手紙の木(タラヨウ)」の葉っぱに爪で文字を書いてみたり、山椒の葉っぱを手のひらでパンッと叩いて広がる香りを体験したり。この日も、照度計を使ってクスノキの周囲の明るさを測定し、個体の成長速度との相関をいきいきと調べている女子生徒たちの姿が見られました。

東京農業大学第一高等学校・中等部

昼休みの時間に、雑木林のクヌギの木の周囲の明るさを測定。「生物の授業の時間に取ったデータをもっと充実させたかったので、先生に照度計を借りてきました」と、自ら進んで学ぶ姿勢が身についています。(東京農業大学第一高等学校・中等部)

また中学1年生では、1クラスに1個ずつ、卵からニワトリを孵す「命の授業」も行われています。順調に孵化して育った個体は「もみじさん」と名付けられ、今も生物部の部室で毎日元気に「コケコッコー」と鳴き声を響かせています。

この「命の授業」をきっかけに、卵の殻が持つ再生機能に着目し、それを「課題研究発表」のテーマに選んだ生徒もいます。卵の殻を粉末状に砕いて炭酸水に混ぜ、それを金魚の水槽に入れたところ、一部切れていたヒレがわずか1日程度で治ったことに気がついたそう。そこから研究にのめり込むようになり、系列校3校合同で行われる研究会にも登壇しました。なんと、そこへ視察に訪れていた企業から共同研究のオファーを受け、現在はプロジェクトが進行中なのだといいます。

同校ならではの「実学」が豊かな実を結び、社会へ、そして未来へとつながる道を確かに切り拓いている。そう強く感じさせてくれる取材となりました。

お話を伺ったのは

東京農業大学第一高等学校・中等部 理科主任 佐藤 将大 先生