トキワ松学園中学校高等学校では、自ら問いを立て、社会とつながりながら学びを深める「探究女子」の育成に力を入れています。中学・高校の6年間を通して、企業との連携やデータサイエンス、個人探求など段階的に探究学習を実施。探究の経験は大学選びや将来の進路選択にもつながっています。今回は、同校の探究学習について、進学指導部長の加藤美恵子先生にお話を伺いました。

進学指導部長 加藤 美恵子 先生
問いを立て、自ら未来を切り拓く「探究女子」が育っています
文化祭から始まる、トキワ松学園ならではの本格的なクラス探究学習

文化祭では、クラスごとに取り組んだ探究学習の成果を発表。仲間と協力しながら深めた学びを、多くの来場者へ伝えます。
トキワ松学園では、中学・高校の6年間を貫くカリキュラムとして、体系的な探究学習に深く取り組んでいます。その中でも、象徴的な取り組みの一つが、秋の文化祭で発表される「クラス探究」です。
中学1年から高校1年までは、クラスごとに1つの大きなテーマを設定し、生徒たちが力を合わせて研究を推し進めていきます。これまでに選ばれたテーマは「タコとイカ」「お菓子」「クラゲ」「植物」「紙」など、さまざま。クラス全体で大きなテーマを設定した後は、グループごとに興味のある切り口を見つけて自主的に探究を深めていきます。

文化祭は日頃の探究学習の成果を形にする晴れ舞台。クラス全体で大きなテーマを掲げ、グループごとに独自の切り口で研究を深めていきます。
例えば、「植物」をメインテーマに選んだクラスでは、植物が人間の学習効率に与える影響を実験・検証したり、海藻に含まれる色素を分析したりと、それぞれがユニークな研究を行いました。また、「クラゲ」をテーマにした際には、水族館へ足を運んで生態を観察するだけでなく、大学の第一線で活躍する研究者を学校へお招きし、お話を伺いながら理解を深めていきました。

学外へのフィールドワークや専門家へのインタビューも積極的に実施。本物に触れることで、生徒たちの知的好奇心に火がつきます。
文化祭は探究のゴールであると同時に、学びをカタチにする場でもあります。生徒たちは調査や実験、フィールドワークを重ねながら研究を深め、クラス全体でその成果をまとめていきます。こうした経験を通して、探究の面白さや、自ら学ぶ楽しさを実感していくのです。
学校を飛び出し、社会や他校の仲間とつながる協働の学びへ
本校が実践する探究学習は、学年が上がるにつれて、社会との接点が広がっていくのが特徴です。
中学2年になると、企業と連携した探究学習をスタートします。企業の方々を講師としてお迎えし、生徒たちは商品開発や、地域の魅力発信などのテーマに挑戦。実際に、社会で働く人との対話を通して、世の中の課題を解決するための考え方を学びます。
続く高校1年では、実在する企業から提示されたミッションに対し、アイデアを提案する全国規模の探究コンテスト「クエストカップ」にエントリー。チームで議論を重ね、自分たちなりの解決策を考えます。
そして高校2年になると、これまでの集大成として、生徒一人ひとりが自分自身の興味・関心を掘り下げる「個人探究」へと進みます。研究を深めるプロセスにおいて、必要に応じて大学や企業、専門機関へ生徒自らが電話やメールでアポイントを取り、協力を得ながら探究を進める生徒も少なくありません。
過去には、校内に自生しているドクダミに着目した生徒がいました。周囲のアジサイが虫に食べられているのに対し、ドクダミは毎年虫食いもなく元気に繁殖していることに疑問を持ったのです。「ドクダミには強力な虫よけ効果があるのではないか」という仮説を立てた彼女は、実験に必要な特定の蚊を確保するため、自ら殺虫剤メーカー等の企業へ問い合わせて協力を仰ぎ、本格的な実験研究をやり遂げました。
また、生徒たちは探究の成果を、外部のコンテストで発表する機会も積極的に活用しています。一例として、中学2年のチームが開発した、家族構成や予算に応じて日々の献立や最適な買い物リストを自動提案するアプリ「Menu log」は、東京都教育委員会が主催する「モバイルアプリコンテスト2025」で見事に銅賞を受賞しました。こうした挑戦を通して自分たちのアイデアを形にし、社会へ発信する経験を積んでいます。

「モバイルアプリコンテスト2025表彰式の様子。「Menu log」が銅賞を受賞しました。自分たちのアイデアを社会に発信する手応えをつかんでいます。
さらに、共通の興味や社会課題への意識を持つ学外の仲間との出会いも、生徒たちの世界を大きく広げています。探究の全国大会で出会った群馬県立尾瀬高等学校の生徒たちと交流を続け、フィールドワークに取り組んでいる生徒もいます。探究をきっかけに学校の枠を越えたつながりが生まれ、新たな学びへと発展していくことも、トキワ松学園ならではの魅力です。

共通の興味を持つ他校の仲間との出会いも大きな刺激に。学校の枠を越えたつながりが、新たな学びのモチベーションを生み出します。
このように、本校の探究学習を通して育まれるのは、単なる机上の知識や、研究する力だけではありません。自ら周囲の人に働きかけ、協力を得ながら課題を解決する力や、社会とつながりながら行動する人間力も養っているのです。
偏差値にとらわれず、自分の興味を軸に見つける未来の進路
こうして6年間をかけて培ってきた探究学習は、生徒たちの大学進学や将来の進路選択に大きな影響を及ぼしています。
一般的な進路選びにおいては、どうしても偏差値や学校の知名度といった既存の物差しを基準にしてしまいがちです。しかし、トキワ松学園で探究活動に取り組んだ生徒たちは、「自分は何を学びたいのか」という本質的な視点から自分の未来を考えるようになります。
例えば、福島の震災復興や先進的な地域づくりをテーマに個人探究を行った生徒は、その活動で得た現場の実態や課題意識をきっかけに、まちづくりを学べる大学・学部に興味をもつようになりました。探究の過程で芽生えた問題意識が、そのまま進路選択の軸へとつながっていったのです。
さらに、文化祭での研究内容をさらに発展させ、起業を果たした卒業生もいます。日本の伝統的な稲わらを有効活用した新しい繊維素材の研究に取り組んだその生徒は、高校在学中にベンチャー企業を立ち上げ、自らの探究の成果をビジネスとして発展させています。
私は、学校における探究学習の大きな価値は、生徒たちが「何を学びたいのか」を見つけられることだと考えています。偏差値だけではなく、自分自身の興味や関心を軸に、自分らしい進路を選ぶことができるようになる。それこそが、トキワ松学園の探究学習の成果だと確信しています。

偏差値にとらわれず「自分が何を学びたいか」で未来を選ぶトキワ松の生徒たち。主体的に問いを立てる経験が、進路の幅を広げています。