2020年は、子どものワクチン接種率が下がったそうですね。
ワクチン接種は、不要不急ではないのです。コロナ禍であっても決められた時期にきちんと受けましょう
そうです。グラフ1、2は、0歳児と1歳児を対象にワクチンの接種率を示したものです。いずれのワクチンも2020年の新型コロナウイルス感染症の流行以降に接種率が低下していることが分かります。
また、グラフ3、4は、外出自粛期間中の予防接種について、保護者に対して行ったアンケート調査の結果です。 1089人のうち、553人が外出自粛期間中にお子さんの予防接種を予定していましたが、グラフ3のように、約1/3が予防接種を延期していました。その理由はグラフ4のように新型コロナウイルス感染が怖かったからという人がもっとも多くなっています。
しかし、厚労省の発表を見ても、新型コロナウイルスは、10歳以下の子どもへの感染はとても少ないですし、重症化することもほとんどありません。それよりも、ワクチン接種をせずにVPDになるリスクの方がずっと大きいということを理解していただきたいですね。
ワクチンには定期と任意がありますが。
正確に言うと、「定期接種」「任意接種」ですね。「定期接種さえ受ければいい」と考えている保護者もいますが、任意接種だからといって受けなくても大丈夫というわけではなく、かかると重い後遺症を残したり、死亡したりするVPDであることに違いはないのです。
VPDから子どもを守るために、任意接種も定期接種同様に必要なワクチンです。 近年、少し前まで任意接種だったワクチンの定期接種化が進んでいます。近いところで言うと、2013年にはヒブ、小児用肺炎球菌、HPV、2014年には水痘(みずぼうそう)、2016年にはB型肝炎、さらに2020年10月には、ロタウイルスワクチンも定期接種となりました。
これで、いまだに任意接種なのは、おたふくかぜ、入学前の三種混合(DPT)、季節性インフルエンザワクチンなどです。定期接種ワクチンがふえていることからも、任意だから受けなくてもいいということではなく、単に制度の問題だけだということが分かると思います。おたふくかぜ、インフルエンザのワクチンは任意接種ですが、受けることを強くお勧めします。
2021年1月現在、新型コロナウイルスの感染拡大は、予断を許さない状況です。新型コロナウイルスワクチンの見通しと、子どもも受けるべきなのかどうかについてお考えをお聞かせください。
現在のところ、12歳以上に対しては臨床試験が開始されているようですが、小児に対する臨床試験の成績は公表されていません。小児に対して、100%有効で、100%安全なワクチンがあれば、接種した方がよいかもしれません。
接種した方がよいか否かは、今後のCOVID-19の小児の疫学、ワクチンの有効性、安全性によって判断されると思います。米国では小児科学会が、行政、メーカーに対して小児の臨床試験を行うように要請したそうです。(※2021年1月現在)
乳幼児をおもちの保護者の方へのメッセージをお願いします
お子さんを育てていると、心配なことがたくさんあると思います。 その不安を払しょくするためにも、医療機関を利用してください。新型コロナウイルスに限らず、感染症が流行すると不安で足が遠のくこともあると思いますが、医療機関の感染防止対策は非常にしっかりとしています。
小児科に至っては、予防接種専門の時間を別に設けたり、風邪などの感染症の子どもとの出入り口や待ち合い室、診察室を分けたりと、徹底した対策を行っています。これは新型コロナウイルスが流行する前から当然やっていることです。
お子さんの健康とみんなの笑顔のために、私たち小児科医はいつも全力でお手伝いします。
Profile
医学博士(慶應義塾大学)、日本小児科学会専門医、NPO法人 VPDを知って子どもを守ろうの会理事長、日本小児科学会代議員、日本小児科学会東京都地方会副会長・運営委員・幹事、東京小児科医会公衆衛生委員会委員
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