横浜の地で100年以上の歴史を紡いできた精華小学校。県内屈指の進学校という顔を持つ一方で、その教育の真髄が「受験テクニック」とは一線を画す人間味があふれるものであることは、意外と知られていないかもしれません。 大切にしているのは、「書く力」と「素直さ」。大人になってから真に輝く「一生モノの自立心」を、精華小学校はどのように育んでいるのでしょうか。2026年度から始まる新たなサポート体制の話題も交えながら、臼井校長先生にその教育の本質をうかがいました。

子どもたちが楽しく主体的に学べる体験型の授業を多く取り入れています(精華小学校)
100枚の原稿に宿る思考のチカラ。「考え抜くプロセス」を大切に

手書きで原稿用紙30~50枚を書きあげるという「関西旅行記」(精華小学校)
精華小学校の教育の柱の一つが、6年間の徹底した作文指導です。その集大成となるのが、6年生の「関西旅行記」。学校が目標として設定しているのは原稿用紙30枚ですが、多い子では100枚近くを書きあげます。
昨今はICTデバイスが普及していますが、本校はあえて「手書き」にこだわっています。手書きは、一文字を消すのにも時間がかかりますよね。だからこそ、子どもたちは書く前に立ち止まり、頭の中で言葉を選び抜き、構成を練る。この「考え抜くプロセス」こそが、本物の思考力を育むのです。
私たち教員も、その熱量に全力で応えます。100枚あれば100枚すべてに目を通し、赤字を入れて返します。子どもたちはそれを受け取り、さらに清書を重ねる。この地道なプロセスを乗り越えた卒業生たちは、「大学の卒論なんて大したことなかったよ」と笑うくらいです。

休み時間に全力で遊ぶからこそ、次の授業への集中力が生まれます(精華小学校)
もちろん、座学だけではありません。毎朝の「西グラウンド3周運動」も、継続の力を養う大切な伝統です。約500mを毎日走り続けることは、体力作り以上に、折れない心を育みます。
そして休み時間になれば、教員と一緒になって全力で遊びます。それがリフレッシュとなって、次の授業での集中力につながっています。
専科制だからできる、学びに「夢中」になれる仕掛けづくり

絶妙なさじ加減の課題が、子どもたちの好奇心と深い集中力を引き出します(精華小学校)
「精華小学校の子どもたちは集中力がある」とお褒めいただくことがあります。もちろん子どもたちの自律性にもよるものではありますが、私たち教員が、学びに「夢中」になれる仕掛けをしているのです。
子どもたちが最も集中するのは、少しだけハードルが高い課題に出会った時です。解けそうなのに、意外と難しい。その絶妙な境界線が、子どもたちのやる気と考える力をぐんと引き出します。教員はそのさじ加減をよくわかっていますので、時には算数オリンピックの問題を出したりもするんですよ。
これを支えるのが、教員が自分の得意な1教科を専門に教える「専科制」です。1教科専門にすることで教材研究を深める時間を持つことができ、さらには学年やクラスの特性に合わせて教材をカスタマイズできるようになっています。
まちがいを消さない。その素直さが成長のエンジンに

課題をまとめるときも、クラスメイトの意見を聞きながら進めています(精華小学校)
知性を大きく伸ばすための土壌として、何よりも大切にしているのが「素直さ」です。
入学説明会などでは、常々「人の話を、目を見て最後まで聞ける子になってほしい」とお伝えしています。周りの言葉を真っ直ぐに聞ける子は、自分自身の判断力と相まって飛躍的に成長していく。その素晴らしい変化を、私たちは教育の現場で幾度となく目にしてきたからです。
こうした素直な心を育む具体的な一歩として、本校では1年生に「消しゴムを使わない」指導を行っています。答えがまちがっていると消しゴムで消してしまって、はじめから正解だったかのように書き直してしまう子がいます。でも私は、「まちがいは隠す必要はないんだよ。赤で思いっきりバツをつけようね」と教えます。
大切なのは、まちがいを認めたうえで、なぜまちがえたのかを自分で確認すること。あとで見返したときに赤いバツがあるからこそ、「自分はここでつまずいたんだな」と学びを客観視できるようになります。この自分のまちがいを認められる素直さこそが、将来、困難にぶつかったときに自ら道を切り拓く力へと繋がっていくのです。
【2026年度改革】「補助教員」の導入で一人ひとりにより深く寄り添う

本校では2026年度の1年生から、補助教員の導入を開始します。
これまでは1学年2クラスを2人で受け持つ学年担任制により、副担任を含む3〜4名のチームで1学年を見守ってきました。来年度からは一年生はさらに、教員免許を持つ補助教員を1クラスにつき1名加えます。これにより、どの授業時間も必ず2名以上の先生が教室にいる体制が整います。
40人学級という活気ある環境のよさはそのままに、より多くの教員で子どもたちを見守りたい。それが、今回の取り組みの狙いです。授業中の細やかなサポートはもちろん、忘れ物の確認や整理整頓といった、低学年のうちに身につけたい生活習慣についても、これまで以上にひとりひとりに寄り添った指導を目指していきます。