東京都の西多摩地域、菅生に広大なキャンパスを構える菅生学園初等学校。周囲は大自然に囲まれており、四季のうつろいを身近に感じられる環境です。その比類なき環境を最大限に生かした体験型の学びに加え、国際教育、プログラミング教育、異年齢交流を重視し、「学ぶ楽しさ」と「豊かな人間性」を育みます。「体験こそが子どもたちの引き出しを増やす」と語る校長先生に、菅生ならではの教育についてお話をうかがいました。

菅生学園初等学校 校長 布村 浩二 先生
真の人間力を引き出す
「豊かな自然」という学び場
自然が教科書!体験から得られる発見や感動
本校は東海大学の系列校として2006年に開校しました。西多摩エリアの高台にあるキャンパスは東京ドーム1.2個分もの広さを誇り、地上6階、地下2階建ての「学びの城」と名付けられた校舎で、初等学校の児童から、中等部と高等学校の「医学・難関大コース」の生徒たちまでが共に学んでいます。

菅生学園初等学校(東京都あきる野市)
私たちの教育の根幹にあるのは、「自然が教科書だ」という建学の精神。文字通り、豊かな大自然に囲まれているのが本校の最大の特長です。学校のすぐ裏手に広がる里山や、「鯉川」の清流、目の前には牧場もあり、この恵まれた周辺環境すべてが子どもたちにとっては最高の学びの場なのです。
例えば、鯉川に出かけ、魚やサワガニを採集する児童の目は、好奇心にあふれキラキラと輝いています。学ぶことが楽しいと探究心が生まれ、もっと知りたいという意欲が沸いてきます。「なぜ?」「そうか!」を繰り返すことで学びが深まり、自ずと想像力も育まれていきます。
小学校時代というのは、人格形成においてきわめて大切な時期。菅生の環境をフルに活用し、友人と共に「歩き、考え、学ぶ」体験の積み重ねこそが自己肯定感を高め、他者への思いやりを育む「心の引き出し」を増やしていくのです。

学校から5分も歩けば鯉川に到着。魚やサワガニを採ったり、水質を調べたり。身近な自然の中に教材がたくさんあります。
「ゆたか」の時間が育む「生きる力」
身近な自然環境を生かした本校のオリジナル授業が、「ゆたか」の時間です。生活科、総合科の時間を活用し、里山や鯉川で四季折々の植物や生き物に触れたり、校内の畑「菅生farm」で作物を栽培したり、田んぼでもち米作りをするなど、年間を通して数多くの体験学習を展開しています。
現在、「学校周辺に生息する生き物を呼び込む」ことを目標に、本格的なビオトープも整備中です。すでにヌマエビやカエル、カミキリムシの姿が多数確認されており、さらにタヌキの足跡まで見つかるなど、徐々に成果が出始めています。子どもたち自ら、よりよい生息環境を整えるために試行錯誤しつつ、楽しく活動を続ける、このプロセスを大切にしています。
また、年に数回、東海大学の藤吉正明教授を招いた特別授業も実施しています。専門家のアドバイスを受けながらの動植物の調査・観察は、子どもたちの視点をよりアカデミックなものへと引き上げます。
「ゆたか」の時間を通して培われる力は、単なる知識の蓄積ではなく、「学ぶ力」です。それこそが将来の「生きる力」に繋がると信じています。

東海大学の藤吉正明教授による「ゆたか」の時間の特別授業。この日は学校周辺で採集した動植物を理科室で観察。

体験型学習「ゆたか」の時間と理科のコラボ授業。校内で採集してきた植物をルーペで観察。「めしべはどれかな?」と興味津々です。
「4つの柱」を軸に、未来を担う人材を育成
本校では、「ゆたか」の時間に加え、プログラミング、英語(国際教育)、特別活動を教育の4つの柱としています。
英語の授業は1年生から週に3時間、ネイティブ教員と日本人教員のチームティーチングにより、「生きた英語」を習得します。横田基地内にあるメンデル小学校との交流、福島県にあるブリティッシュヒルズでの体験学習、5・6年生の希望者を対象としたオーストラリアでのホームステイ、旅行会社による留学生との対面交流など、異文化理解を促すための機会も豊富に設け、世界と対話できる力を育みます。

2年生の英語の授業。歌とジェスチャーを交えながら、楽しく単語やセンテンスを学びます。
プログラミングは、低学年はロジカルシンキングからスタートし、高学年になるとロボットを動かせるまでになります。目指しているのは、スキルの向上にとどまらず、IT技術を駆使して課題解決ができる人材の育成です。

プログラミングの授業でアニメーションを作成する2年生の児童。「ゆたか」の時間に行った近隣の牧場見学が題材です。
「特別活動」は、日頃の学級活動や委員会活動に加え、1年生から6年生までの縦割り班活動を重視しています。学年の枠を超えた交流の中で、忍耐力、優しさ、協調性、コミュニケーション力、リーダーシップといった非認知能力が自然と発現していきます。
本校は、決して便利な場所にある学校ではありません。しかし、この豊かな環境から得られる体験と学びは「何にも代えがたい」ものです。その信念をベースに、カフェテリアでの給食、スクールバスの充実やアフタースクールなどを通じて、子どもたちが快適な学校生活を送れるよう全力でサポートしていきます。

毎日の給食は「学びの城」最上階にあるカフェテリアで全児童が一緒にいただきます。「菅生farm」で収穫した野菜が登場することも。
ここで育った子どもたちが、菅生の森で得た豊かな引き出しを携え、未来へと力強く歩んでいくことを願っています。