創立70年を超える伝統校、昭和女子大学附属昭和小学校。2024年度より「探究コース」と「国際コース」の2コース制を導入し、新たな教育実践を積み重ねてきました。導入から3年目を迎えた今、校内では自ら問いを立て、他者と協働しながら生き生きと動き出す子どもたちの姿が見られます。前田崇司校長先生に、これまで2年間の振り返りとこれからの展望を伺いました。
「やらされる30分」より「自ら取り組む3分」を学びへの意欲をより引き上げた2年間
本校が「探究コース」と「国際コース」の2コース制を始動させてから、丸2年の月日が流れました。東京23区内の私立小学校として、いち早くこの体制を整えた背景には、本校が長年取り組んできた探究的な学びの積み重ねがあります。その考え方を柱に、1年生から「なぜ?」「どうして?」を原動力に動く主体的な学びを育てていく形として、現在のコースが生まれました。
この間で印象に残っているのは、子どもたちの学びに向かう意欲の変化です。「探究コース」では、子どもが自分で「知りたい」「やってみたい」と思ったことを起点に、学びがどんどん広がっていきます。図書室で調べたり、友達と共有したり、実際に試してみたりと、子どもたちが自ら動きながら学びを深めていく姿が見られます。
例えば、ある子が虫を持ってきたことをきっかけに、周りの子どもたちが集まり、「これは何だろう」と図鑑を囲む輪が広がり、「どうやって育てるのかな?」「食べ物は何だろう」と飼育環境を整えるための話し合いが始まる――このように、1年生であっても興味の連鎖が止まりません。誰かに指示された「やらされる30分」の学習よりも、自ら「やってみたい!」と目を輝かせる「3分」の没頭。その積み重ねが、深い学びへと繋がっていくのです。

1匹の虫から、子どもたちの興味がどんどん広がっていきます(昭和女子大学附属昭和小学校)
こうした学びは、学校だけで完結するものではありません。家庭での理解や取り組みも大きな支えとなっています。本校の保護者の皆さまは非常に協力的で、探究の学びにも積極的に関わってくださっています。
例えば、夏休みにはご家庭で子どもと一緒に体験に取り組んでいただいたり、休み明けの中間発表や研究報告会に向けてサポートしていただいたりと、子どもたちの学びをともに見守ってくださっています。学校と家庭が手を取り合い、子どもの成長を共に喜ぶ文化が、本校の探究をより強固なものにしています。

保護者も見守る報告会。探究の成果を発表し、周りと共有する中で、伝える力も育まれています(昭和女子大学附属昭和小学校)
英語は「ゴール」ではなく、自分を届ける「手段」
2年生が英語劇『桃太郎』で見せた成長の証
国際コースが開設されてから2年。英語で教科を学ぶ「イマージョン教育」を通じて、子どもたちは着実な成長を見せてくれています。しかし、本校が目指しているのは、単に「英語ができること」だけではありません。
英語はあくまで、世界とつながるための大切なツール(道具)です。真に育てたいのは、「自分はどうありたいか」という意志を持ち、それを表現できる力。そして、仲間と共に新しい価値を生み出そうとする、しなやかな協働の姿勢です。

「自分は何を伝えるのか」を、個々が意識して取り組んだ英語劇『桃太郎』(昭和女子大学附属昭和小学校)
その象徴的な一幕が、2年生による英語劇『桃太郎』でした。子どもたちはそれぞれ役割を持ち、「何を伝えたいのか」「どう伝えたら観客の心に届くのか」考えながら表現していました。英語で演じるだけでなく、伝える内容や役割を意識して取り組んでいる姿に、大きな成長を感じました。
そこには、単なる言語習得ではなく、表現する力や、友達と協働して一つのものを作り上げる力、まさしく次世代のグローバルリーダーに必要な力の育ちが見られました。
「ありのままの自分でいい」という実感が、学びに向かう力を支える
5つの資質・能力を軸に育む、これからの時代に必要な力
時代がどんなに大きく変わっても、私たちが大切に守り続けているのは、「自分づくり」「コミュニケーション」「思考力」「表現力」「持続チャレンジ」という5つの資質・能力を軸とした教育です。
これからの予測困難な時代において、知識を「どれだけ覚えたか」以上に大切なことがあります。それは、得た知識をどう活用し、多様な他者と手を取り合いながら、いかに新しい価値を創造していけるか、ということです。
だからこそ私たちは、子どもたちが自ら課題を見つける力、仲間と協働する力、そして一つの答えに満足せず「次の問い」を生み出す力を、日々の学びの中で丁寧に育てたいと考えています。
その土台となるのが「自尊感情」です。「ありのままの自分でいい」「やってみてよかった」という確かな手応え。この自己肯定感こそが、自ら学びに向かう主体的・能動的な姿勢へとつながっていきます。

子どもたちとの何気ない会話にも、成長を感じます(昭和女子大学附属昭和小学校)
こうした力の芽生えは、日々の何気ない交流の中にも溢れています。毎朝、登校してくる子どもたちと挨拶を交わしていると、「校長先生、少し寒くなってきましたね」と季節の移ろいを言葉にしてくれる子がいます。また、校長室を訪ねてきて「先生、この問題についてどう思いますか?」と、対話を求めてくれる子もいます。
相手を意識しながら自分の考えを整理し、自分の言葉で真っ直ぐに伝えようとする姿。子どもたちの瑞々しい発信は、私たち大人にとっても大きな刺激となり、共に学び合っているのだと実感させてくれます。
2030年、その先へ。自ら問い、学び続ける「自立・自律した学習者」へ。2コース制の進化が描く、新しい昭和の教育。
瑞々しい感性が躍動するこの6年間、子どもたちの可能性を拓く私たちの挑戦に、終わりはありません。
私たちが追い求めるのは、与えられるのを待つのではなく、自らの手で未来を拓き、生涯を通じて学びの喜びを謳歌できる「自立・自律した学習者」の姿です。
今後は、2コース制となってからの1期生が卒業を迎える2030年頃に重ねて、学校全体で策定し取り組む中期計画のもと、教育をさらに発展させていきます。
本校を巣立つとき、子どもたちにはどのような力が備わっていてほしいか。その姿を見据えながら、日々のカリキュラムを一つひとつ丁寧に組み立てています。
卒業時に手渡したいのは、一生モノの「学びの羅針盤」。
その不変の志を胸に、 子どもたちの探究がどこまでも広く、深く根を張る仕組みを整えていきます。

「ありのままの自分でいい」という自信を胸に、新たな一歩を踏み出す卒業生たち(昭和女子大学附属昭和小学校)