文教大学付属中学校・高等学校では、未来を見据え、日々の学びや活動を「自分ごと」として捉える力を育んでいます。探究活動や生徒主体の学校づくりを通して、自ら考え、周囲を巻き込みながら行動する生徒たちが増えてきました。
2027年に創立100周年を迎える同校では、時代に合わせた新たな挑戦も進んでいます。今回は、校長の神戸航先生に、生徒たちの変化やこれからの学校づくりについて伺いました。

文教大学付属中学校 校長 神戸 航 先生
未来を自らの手で描き、主体的に行動できる生徒が育っています。
学校生活を「自分ごと化」し、自ら動き出す生徒たち
近年、本校の生徒たちを見ていて最も大きく感じる変化は、学校生活のさまざまな経験を「自分ごと」として捉え、行動する生徒が増えてきたことです。勉強や部活動、学校行事、生徒会活動などを、ただ「やるべきことだから取り組む」のではなく、「これは将来の自分につながる経験なんだ」と意味を見いだし、自分はどのように関わるべきかを考えながら行動できるようになっています。
その象徴の一つが、生徒会活動です。数年前までは生徒会役員の定員に対して立候補者が少なく、教員が「この生徒なら力を発揮できるのでは」と声をかけることもありました。しかし、今年度の選挙では中高合わせて20名以上の生徒が立候補し、定員を大きく上回りました。「学校をもっと良くしたい」「自分たちが中心となって学校づくりに関わりたい」という思いを持つ生徒が増えていることを、とてもうれしく感じています。

多くの生徒が立候補した今年度の生徒会選挙。自分たちの学校をより良くするため、生徒自身が考え、行動する姿が見られます。
本校は2027年に創立100周年という大きな節目を迎えます。その節目を前に、生徒たちから「100周年だけでなく、99周年の今も大切にしたい」という声が上がりました。そこで、生徒会が中心となって99周年ロゴを全校生徒から募集。完成したロゴは体育祭のTシャツにも使用され、生徒たちの手で99周年を盛り上げています。
体育祭の競技も、以前は教員が内容や順番を決めていましたが、現在は生徒が中心となって企画しています。その一つが、99周年にちなんだ「99周年リレー」です。3人1組で協力しながら走り、チームごとに99人がバトンをつないでいく競技で、私自身も参加しました。

中1から中3までが3人1組となり、99人でつないでいく「99周年リレー」。
生徒たちが考えた競技に神戸校長も加わり、一緒に体育祭を楽しみました。
「全員が楽しめるにはどうしたらいいか」「みんなで学校を盛り上げるには何ができるか」。そう考えながら、生徒たちは学校行事を自分たちの手でつくり上げています。
未来を考えるマインドが、学びと行動を変えていく
大学進学は、生徒たちが将来なりたい自分へ近づくための一つの通過点です。本校では進路選択において「どの大学に入るか」だけではなく、その先にある社会で「自分はどうありたいのか」「どのように人や社会に貢献していきたいのか」を考えることを大切にしています。
未来の自分を思い描くことで、今取り組んでいる学びの意味が見えてきます。こうしたマインドを持つことで、日々の学習や学校生活を自分ごととして捉え、行動につなげることができるのだと思います。
そのマインドと行動が結びついている取り組みの一つが、「クリエイティブチャレンジ(CC)」です。中学1年から高校2年まで取り組むCCでは、学校から与えられたテーマではなく、生徒自身が「解決したい」「力になりたい」「挑戦してみたい」と思うテーマを設定し、探究を進めていきます。
中学3年からは学年やクラスの枠を越え、興味のある分野ごとに集まって個人またはグループで活動します。専門家へのインタビューや地域との連携など、外部と関わりながら自分たちの考えを実際の行動へと移していくことを大切にしています。

中学3年生から高校2年生までが、興味のあるテーマごとに集まって活動。
先輩・後輩の枠を越えて意見を交わすことも、大きな学びにつながっています。
大切なのは、きれいな成果を出すことだけではありません。挑戦した結果、思うように進まなかったとしても、その過程で何を考え、どのように試行錯誤したのかに価値があります。
最近では、地域の方と連携したり、実際に社会へ向けたアクションを起こしたりする生徒も増えています。自分の思いを行動に移し、社会とつながりながら学ぶ経験が、これからの時代を生きる力になると考えています。

1年間の探究活動を共有する「探究祭」。
発表するだけでなく、互いの研究から新たな気づきを得る、生徒同士の学び合いの場となっています。
こうした経験を重ねる中で、社会の中で自分の力をどう生かしていきたいのかを考える生徒が増えてきました。近年、大学合格実績が伸びている背景にも、生徒たちの意識の変化があると感じています。
特に昨年度は、医・歯・薬学部への進学を決めた生徒が多くいました。さまざまな可能性に触れ、「誰かの役に立ちたい」「社会に貢献したい」という思いを育む日々の学びが、生徒一人ひとりが将来を考えるきっかけの一つになっているのだと実感しています。
生徒とともに変化を続け、より良い学校をつくる
生徒たちが未来を見据え、自ら考えて行動する力を育んでいるように、私たち教員も「学校をもっと良くしていきたい」という思いを持ち、変化し続けることを大切にしています。時代や社会が変化していく中で、今の生徒たちにとって本当に必要な経験とは何かを考え、教育活動を見直しています。
その一つが、修学旅行のリニューアルです。中学校では2028年度から沖縄本島・八重山諸島へ行き先を変更。高校では2027年度から、フィンランド・エストニア、ブルネイ・シンガポール、台湾の3コースから、生徒自身が行き先を選択する形になります。

生徒たちにとってより良い学びの機会となるよう、修学旅行もアップデート。
新しい価値観に触れる経験を通して、世界を見る視野を広げていきます。画像はエストニアの首都タリンに下見に行った先生たち
新しい行き先を決めるにあたっては、教員自身が実際に現地へ足を運び、生徒たちにどのような経験をしてほしいのかを考えてきました。
例えばフィンランドでは、デザインや食、暮らしの中に、その土地ならではの自然環境や文化、価値観が反映されていることを体感しました。世界的に知られるデザインも、単なる美しさだけではなく、人々の暮らしや考え方と深く結びついています。現地で見て、感じることで初めて気づける学びがあります。
一方、エストニアは電子国家として知られ、行政サービスのデジタル化が進んでいます。また、新しいアイデアや技術を生かして社会をより良くしようとするスタートアップ文化も根付いており、その実現に向けて自ら行動する姿勢に触れることができます。
世界のさまざまな文化や社会のあり方を知ることで、「自分とは関係のない遠い世界の話」ではなく、「自分ならどう考え、どう関わることができるのか」という視点を育む機会にしたいと考えています。
生徒たちの豊かな主体性と、変化を恐れない教員の情熱。その両輪が、2027年に創立100周年を迎える同校の、新しい1ページを紡ぎ出していきます。
