スペインで設立された聖心侍女修道会をルーツに、1948年に創立された清泉女学院中学高等学校。
玉縄城跡の豊かな自然に囲まれた学び舎で、キリスト教教育を軸に、やさしさと品格を備え、社会に主体的に関わり貢献する女性の育成を目指しています。
今回は時代の変化に応じた深い学びを支える4つのプログラムのなかから、「サイエンス・ICTプログラム」を牽引する理科主任の池上裕子先生にお話をうかがいました。

清泉女学院中学高等学校 理科主任 池上 裕子 先生
確かな学力と豊かな心を育み、自分の意志で社会に貢献できる人材を育成します
生徒一人ひとりの可能性を伸ばし、未来の選択肢を広げる4つの教育プログラム

広い敷地の中に豊かな自然が広がる校内。「私たちの後ろの森以外にも、別の場所にも森があります。校内で動植物の観察ができるのは清泉ならではの魅力です」と生徒さん。(清泉女学院中学高等学校)
本校では、よりよい社会をつくるために自ら積極的に貢献できる人材を育成したいと考えています。そのために必要となるのは、多角的なアプローチで問題解決を目指すことができる確かな「学力」と、他者のために自分自身の持てる力を発揮しようとする温かい「心」です。生徒一人ひとりがこれらをバランスよく伸ばしていけるよう、本校では教育の柱として4つのスペシャルプログラムを展開しています。
まず、本校の人間教育の根幹をなすのが「ライフオリエンテーションプログラム」です。倫理の授業をはじめ、多様な価値観や背景を受け入れられる素地を育む活動、さまざまな課外活動や学校行事などを通して、生涯の指針となる心の土壌を育てます。
2つ目の「グローバルプログラム」では、質の高い英語授業や国内外の姉妹校への留学制度などにより、多様な文化と出会いながら自身の世界を大きく広げていきます。
3つ目の「ライフナビゲーションプログラム」は、中学の3年間をかけてじっくり取り組む探究活動「My Story Project」が代表的です。
大学と連携した授業体験や外部コンテストへの挑戦などを通して、これからの社会を生き抜く上で不可欠な創造力、問題解決力、そして継続力を磨きます。
そして4つ目の柱が、実験や観察を重視した理科の授業、充実したICT設備、中1からのプログラミング実習などを通して、理系分野への興味の芽を丁寧に育てる「サイエンス・ICTプログラム」です。

6年間を通して行われる「ライフオリエンテーションプログラム」。愛を中心とした「清泉が大切にする10の価値」への理解を促し、どう生きるか考えます。
(清泉女学院中学高等学校)

英語は中学1年から習熟度別の授業を実施。この日、中学2年の最上級クラス「ARE」ではネイティブの先生のもと、オールイングリッシュで活発なディスカッションが行われていました。(清泉女学院中学高等学校)
豊かな自然に囲まれた広大なキャンパスで、五感を使って本物に触れるサイエンス
私は理科の教諭ですので、本校が誇る「サイエンス」の魅力をぜひ多くの方々に知っていただきたいと思っています。清泉の理科が何よりも大切にしているのは、教科書の一歩先にある「本物に触れること」「自分の目で直接見ること」です。そのため、日々の授業でも実験や観察が多く、中1~高1では毎年野外学習の機会が設けられています。
まず中学1年では、緑豊かな校内環境を最大限に活用し、敷地内にある森林に入りそこに生息する動植物の生態について、丸一日をかけてじっくりと学びます。中学2年になると箱根へと赴き、火山について学びます。
箱根は2015年に小規模な水蒸気噴火が実際に起きているため、当時の火山ガスの影響によって枯れてしまった樹木などを目の当たりにすることができ、生徒たちは「地球は生きているんだ」ということを肌で体感します。 中学3年では三浦半島へ出かけて地層や様々な地質構造、海辺の豊かな動植物を観察します。

中学の3年間を通して探究心を育む「My Story Project」。中学3年では集大成として、1年間の研究成果をプレゼンテーションし、生徒同士がお互いの学びをシェアします。(清泉女学院中学高等学校)
さらに高校1年では、箱根と真鶴の森林を比較する一歩進んだフィールドワークを行います。温暖な気候に恵まれた真鶴の森は、一年中葉を茂らせる照葉樹林です。
一方、標高が高く寒冷な箱根の森は、秋に落葉する夏緑樹林です。現地を訪れた生徒たちからは、「真鶴は鬱蒼としていて木々がダイナミック。いかにも“森”という感じ!」「箱根の森は光が入って軽やかで、なんだか妖精が出てきそうです!」といったリアルな歓声が上がります。このように、それぞれの生徒が生命の営みを五感で感じ取ることで、科学的な視点はもちろん、自然を楽しむ豊かな心も同時に成長していくと信じています。

中学1年~高校1年までが行う理科の野外学習では、丸一日使って本物の自然に触れ、動植物や地質などを観察します。知識と体験を結びつける清泉ならではの伝統プログラムです。(清泉女学院中学高等学校)
理工系分野を未来のキャリアの選択肢に。
ワクワクする「自分だけの何か」との出会い
近年、本校が特に注力しているのが、理系進路選択の幅を広げる取り組みです。
その1つである国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催し神奈川工科大学によって実施されている女子中高生の「理系進路選択支援プログラム」では、中学1年生全員が校内で大学の先生が行う高度な実験授業に参加しています。
その他に、色々な学年を対象に、大学の最先端の研究室を訪問したり、実際に研究職に就いて活躍されている方からお話をうかがったりする機会もあります。
この取組みの一番の狙いは、「理工系分野」もキャリアとしての選択肢に加えてもらうことです。
生徒たちに「理系からイメージする職業は?」と尋ねると、多くは「医師」や「薬剤師」と答えます。そして、「大学での勉強が難しそうだから私は文系」「興味はないわけじゃないけれど、将来の想像がつかないから理系は無理」と、早々に可能性を狭めてしまう生徒も少なくありません。

理工系の進路の選択肢を広げる「理系進路選択支援プログラム」。中学1年生には、大学の先生による専門的な実験講座が準備されており、理工系分野への興味・関心が高められます。
(清泉女学院中学高等学校)
しかし実際には、化学や農学分野の研究が、生徒たちにとっても身近な化粧品メーカーや食品メーカーの商品開発にも直結しています。
そうした広い世界を知らないままでは、将来の選択肢に入る余地すらありません。
だからこそ、中学1年のできるだけ早い時期から「理系のこの分野に進むとこんな勉強ができて、将来はこういう仕事につながっているんだ」というロードマップを知ってもらうために、さまざまなプログラムを用意しています。
誤解していただきたくないのは、皆さん理系の道に進みましょうと言っているわけではない、ということです。
生徒たちには、文系理系を問わず、自分が本当にやりたいことを見つけ、その道を突き進んでほしいと思っています。
ただ、その選択の幅をはじめから狭めることなく広げてあげることこそが、彼女たちが将来より広く世界へ羽ばたいていくための原動力になると確信しています。
私自身は「藻類」の研究をしていたのですが、学生時代に「藻」という存在に出会ったとき、「これだ!」と心躍る感覚が湧き上がったのを覚えています。
本校の生徒たち一人ひとりが、そんなワクワクする「自分だけの何か」を見つけられるように、これからも全力でサポートを続けていきます。