玉川学園中学部・高等部の教育を象徴する「自由研究」。中学1・2年生は全19分野もの選択肢から、自らの興味・関心に合わせてテーマを選び、毎週2時間をその探究に充てています。
さらに中学3年生では、論理的思考や論文作成のスキルを基礎から学ぶ「学びの技」へと発展。
生徒たちが純粋な「好き」を学問へと昇華させていく現場を取材し、中学部長の土屋和彦先生と、陶芸担当の井上惠介先生にお話をうかがいました。

玉川学園中学部・高等部 中学部長の土屋和彦先生
自らの手で触れ、体感したものだけが、生きた知識になる
無心になって自分と向き合う「陶芸」は、
プロの陶芸家による指導も
熱気あふれる陶芸アトリエで、生徒たちが一心に粘土と向き合っています。指導するのは、プロの陶芸家であり、同校の卒業生でもある井上惠介先生です。井上先生自身、中学部の自由研究は「工作」でヴァイオリン製作に没頭し、高等部では「バスケットボール」部の主将を務めながら、高3の自由研究で「陶芸」に出会ったという経歴の持ち主。
「私にとって自由研究は、自分の本領を発揮できる場所でした。ひたすらヴァイオリン作りに没頭した日々を懐かしく思い出します。当時は無になれる時間だと思っていましたが、振り返れば、徹底的に自分と向き合える時間だったのだと分かります」と語ります。
毎週2時間開かれる自由研究の「立体造形」分野では、陶芸のほか、木工によるヴァイオリン製作など、各自が選んだ創作に集中します。
「1年間で作品を作り上げるのは決して簡単なことではありません。いくつかの基本技法は教えますが、あとは型にとらわれず、自由に、想像をふくらませて製作してくれたら、技術の有無は関係ありません」という井上先生の言葉が、生徒たちの自由な表現を支えています。

教科学習から芸術、スポーツまで全19分野から選べる自由研究。「工作」の現場では、黙々とヴァイオリンの木肌を削る生徒たちの姿がありました。(玉川学園中学部・高等部)

「土とともに生きてきた人間の本能でしょうか、生徒たちは泥汚れも気にせず、無心に土と向き合い、瑞々しい作品を作り上げていきます」と井上先生。 (玉川学園中学部・高等部)

キャンパス内で切り出された木材を使い、本格的な工作機械を操作しながら作品を仕上げていく自由研究「工作」の生徒たち。 (玉川学園中学部・高等部)
中学3年は「学びの技」で論文作成に挑戦!
中学1・2年で感性を磨いた「自由研究」は、中学3年から、1年をかけて論文作成やプレゼンテーションの手法を体系的に学ぶ「学びの技」へとつながります。自由研究と同じく授業は週2時間。オリジナルテキストを活用し、「好奇心を持つ」⇢「多角的に見る」⇢「情報の取捨選択をする」⇢「論理的にまとめる」⇢「論文執筆・発表する」⇢「評価する」といった、一連のラーニングスキルを習得していきます。
研究テーマは、生徒自身が日常の疑問から設定します。「学校に仮眠制度は必要か」「リビングは本当に勉強に適しているか」「給食に牛乳は必須か」など、切り口は実にユニークかつ多種多様。生徒一人ひとりに指導教官がつき、伴走します。
中学部長の土屋和彦先生はこう語ります。「指導する教員側も、筑波大学の研修に参加して論理的思考や文章指導のノウハウを学んでいます。私たちが大切にしているのは、生徒が選んだテーマを否定しないこと。論文としての構成力を身につけるプログラムだからこそ、『テーマはできるだけピンポイントに絞ろう』といった、手法のアドバイスに徹しています」

「中学3年で『一本の論文を書き上げる』という生みの苦しみと達成感を味わうからこそ、高校1年から再開する自由研究の質がグッと高まります」と土屋先生。(玉川学園中学部・高等部)
創立以来変わらない「ホンモノに触れる教育」
「探究学習はもちろん、日々の授業や行事のすべてにおいて、私たちは『本物に触れる』ことを何より重視しています。自らの手で触れ、体感したものだけが、揺るぎない生きた知識になるからです」と土屋先生。この姿勢は創立当初から脈々と受け継がれています。
過去には、生徒の「世界一の達人からスキーを習いたい」という熱意に応え、伝説のスキーヤーであるハンネス・シュナイダー氏を招いてスキー学校を開校したほか、デンマーク体操の考案者ニルス・ブック氏を招聘した歴史もあります。その精神は今も生きており、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との教育交流や、ジャズ・クラリネット奏者の谷口英治氏を招いた鑑賞教室などが継続して行われています。

20年以上続く、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員との教育プログラムで、世界最高峰の響きを体感。本物との出会いが深い探究心を育てます。(玉川学園中学部・高等部)
「一流の本物に触れて何かを感じ、それを表現する。その繰り返しが、物事を深く探究する目を養うのです」と、土屋先生は笑顔で語ってくれました。

調理実習室では「琥珀糖」の自由研究に取り組む生徒たちの姿も。カラフルな美しさを楽しみながら、砂糖が再結晶化するメカニズムを観察し、レポートにまとめます。(玉川学園中学部・高等部)