【2026特長ある学び】お茶の水女子大学との中高大連携で湘南白百合学園中学・高等学校が深める「探究」の本質

20年以上の歴史を誇る、湘南白百合学園中学・高等学校の「探究教育」。近年は中高大連携しているお茶の水女子大学の教授陣を招き、中学3年生が「環境問題」をテーマに本格的な研究へと挑んでいます。
研究のプロから生徒一人ひとりが直接アドバイスを受けるという贅沢な学びの環境と、そこから育まれる生徒たちの成長について、教頭・広報部長の水尾純子先生にお話を伺いました。

湘南白百合学園中学・高等学校

湘南白百合学園中学・高等学校 教頭・広報部長 水尾 純子 先生

研究のプロの視点に触れ、主体的に問いを深める力を養います

お茶の水女子大学教授の直接指導で深める
環境問題の実験計画

湘南白百合学園で実践されている探究の授業が行われている多目的スペースを訪れると、そこには心地よい緊張感が満ちていました。机を囲むのは、1人のお茶の水女子大学の先生と5〜6人の生徒たちです。中学3年生の生徒たちは、自ら立案した環境問題の実験計画書を、真剣な眼差しで先生に向けてプレゼンテーションしています。

この日は、中高大連携するお茶の水女子大学の教授陣を招いた探究の特別授業です。大学の先生方は、ときにホワイトボードへイラストを交えて描きながら、「実験の再現性をより高めるためには、どのような条件設定が必要か」といった、研究のプロならではの具体的なアドバイスを投げかけています。自分の発表を待つ周りの生徒たちも、仲間へのアドバイスを漏らさず吸収しようと熱心に耳を傾けている姿が印象的です。

湘南白百合学園中学・高等学校

お茶の水女子大学の先生から直接指導!研究の第一線で活躍するプロの助言が、生徒たちの探究心をさらに刺激し、研究の質を高めます。

この「環境問題」をテーマにした中学3年生の探究の授業は、年間を通して段階的に行われます。春にはまず「仮説検証の考え方」や「実験の組み立て方」の基礎を講義と実験を通して体系的に学び、その上で生徒一人ひとりが独自の探究テーマを決め、計画書を作成してきました。そして今日は、夏休みの個人実験へと踏み出す前の、重要なブラッシュアップのステップとなります。

教頭・広報部長である水尾純子先生は、この大学連携授業の意図をこう語ります。
「本校の探究教育には20年以上の歴史がありますが、専門家によるさらなる肉づけや学問的なアプローチを取り入れたいという思いから、お茶の水女子大学の先生をお招きする試みが始まりました。なにより、普段お話する機会もない研究のプロフェッショナルから、『その着眼点は非常に面白いね』と直接認めてもらう経験は、生徒たちのモチベーションを格段に引き上げています」

試行錯誤の末に知る研究の面白さ。
東大推薦進学へと繋がった中3夏の実験

夏休みに各家庭で生徒たちが自力で進めた実験の成果を、クラス全員が発表し、そこからクラス代表を選出するのですが、その選出方法も生徒が主役となっています。

Googleフォームを活用し、生徒全員が全員に対して「よかった点」や「今後の課題」などのフィードバックを送り合います。その互いの評価データをもとに、クラス代表を決定するのです。
こうして選ばれた代表者たちは、3学期に学年全体の前で行われる発表会でプレゼンテーションを披露し、1年間の探究の学びを締めくくります。

長いスパンで一つの問いに向き合う探究活動では、ときに壁にぶつかり試行錯誤する経験こそが大切な学びとなります。水尾先生は、かつて液状化現象をテーマに研究に挑んだ、ある生徒のエピソードを教えてくれました。

「東日本大震災の直後、身近な場所が被害を受けたことをきっかけに液状化現象の実験を始めた生徒がいました。ところが、何度自宅で実験を繰り返しても、自分が最初に立てた仮説通りのデータが全く得られないのです。一時は『実験結果を改ざんしてしまおうか』と思うほど真剣に悩んだそうです。しかし、授業で事前に学んでいた『研究倫理』の存在が彼女を思いとどまらせました。そして、仮説の修正をしながらコツコツと粘り強くデータをとり続けるなかで、『思い通りにいかないからこそ、研究っておもしろい!将来は理系に進もう』と決心したそうです。

その後も高校で探究を続けた結果、東京大学の推薦入試で見事理工学部へと進学していきました。のちに『自分の原点はこの中3の探究にありました』と話してくれたのは本当にうれしかったですね」

目先の数字より大切な生徒たちの未来に種をまく
「息の長い教育」

このような中高大連携の成果について、周囲の大人たちから「進学実績や進路先の選択にどのような変化がありましたか」と問われることも少なくない、と水尾先生は明かします。しかし、湘南白百合学園がこのカリキュラムを通じて真に目指しているのは、受験の合格実績といった目先の数字だけで測れる変化ではありません。

「教育とは本来、息がすごく長いものだと思っています。今すぐ目の前の結果として表れなくてもいいのです。生徒たちが大人になり、あるいは何十年後かにおばあちゃんになった時、中3のときに受けた今日の授業をふと思い出すかもしれない。
『あのとき大学の先生に自分の拙い計画を熱心に聴いてもらい、説明してもらったな』という温かい記憶が、長い人生のどこかで誰かの糧になったり、新しい一歩を踏み出すときの勇気になったりする。私たちは、そういう遠い未来の瞬間のためにも、今ここで大切な種をまいているんです」と水尾先生は優しい眼差しで語ります。

学校という既存の枠を超え、社会の多様な大人たちや専門家に導かれながら、一生役に立つ「学びに向かう姿勢」を身につけてほしい。そして、「愛ある人」として自立した女性へと成長してほしい――。湘南白百合学園が脈々と受け継いできた教育理念と生徒への深い愛情が、このお茶の水女子大学との連携による探究の授業にも体現されていました。

湘南白百合学園中学・高等学校

専門家からのアドバイスをもとに、生徒同士でさらにブラッシュアップ。お互いの着眼点をリスペクトし合いながら、研究の計画を深めていきます。

お話を伺ったのは

湘南白百合学園中学・高等学校 教頭・広報部長 水尾 純子 先生