季節に応じた野菜の栽培活動を始め、毎日のおいしい給食、子どもたち自身が調理をする「クッキング」など、食育に力を入れている宮崎台幼稚園。
年間を通したプールあそびや、五感をフル活用する表現活動も大切に、「ゆたかな創造性」、「すこやかな体」、「ひろい心」を育みます。子どもたちの「やってみたい!」に耳を傾けつつ、工夫を凝らした楽しい保育を行う3人の先生方にお話をうかがいました。
創造力と表現力を育み、
友だちや先生との信頼関係を深めるきっかけに
F先生:
「ぬたくり」と呼んでいる表現活動は、子どもたちが本当に大好きな時間です。園庭や保育室一面に段ボールや大きな紙を広げて、ダイナミックに絵の具を塗りたくって遊びます。
「絵の具を使って絵を描きましょう」ではなく、まずは絵の具という素材そのものを体全体で思い切り感じてもらうところからスタートするんです。
F先生:
ですから、全身、絵の具まみれになってもOK。
4~5月あたりは気候もおだやかなので、園庭で思い切り「ぬたくり」ができます。
まだ少し緊張していたり、新しいお友だちや先生と距離感を探っていたりする時期ですが、「ぬたくり」を通じて一気に自分自身を解放できるきっかけにもなっています。
H先生:
最初は「先生の腕に絵の具を塗っちゃっても本当にいいのかな…」と、ドキドキしている子も、誰かが大胆に遊び始めるのを見ると「あ、楽しそう!自分もやっちゃおう!」と連鎖していくのがほほえましいですよね(笑)。
N先生:
言葉で「お友だちや先生と仲良くしよう」と伝えるより、こうして一緒に遊ぶことから信頼関係ができていくと感じています。
F先生:
「この色とこの色を混ぜたら、新しい色に変化した!」と、子どもたち自身が遊びの中で新しい発見をしていくのも、楽しい学びの一つです。
N先生:
イベントとして、父親参加型の「ぬたくり」を開催することもあります。
全力で遊んでくれるお父さんの姿を見られて、子どもたちは大喜びしています。

絵の具という素材を全身で感じる、「ぬたくり」活動。最初は恐る恐るだった園児も、楽しくなるにつれ大胆に!
(宮崎台幼稚園)
「できた!」の喜びが心の成長につながります
H先生:
幼稚園の隣にスイミングスクールがあり、年中さんと年長さんは、年間を通して週に1回、プールあそびの時間があります。
F先生:
本格的な25メートルプールで、最初は怖がって泣いてしまう子もいますが、決して無理に潜らせるようなことはせず、その子のペースに合わせるので、あっという間に慣れて楽しんでいます。
N先生:
スイミングスクールのプロのコーチ陣が指導してくださるので、安全面でも非常に心強いです。
ここで目指しているのは、早く泳げるようになることではなく、段階を踏みながら「水は怖くないし、気持ちよくて楽しいな」と感じてもらうことを大事にしています。
F先生:
プールのための着替えは、基本的生活習慣を身につけることにもつながっています。
例えば、シャツを裏返しに脱がないとか、洋服はたたんでしまうとか…。繰り返すうちにスムーズに短時間でできるようになっていくので、やはり日頃の積み重ねが大切だなと実感します。

園に隣接するスイミングスクールと連携しており、
年中さんから週に1回、プール指導があります。水に慣れ、元気な体を作ります。
(宮崎台幼稚園)
N先生:
スイミングスクール独自の進級システムがあることも、子どもたちのモチベーションに繋がっています。
F先生:
例えば、水に潜れた、水の中で目を開けられたなど、コーチが見てくださっていて、できたら帽子にワッペンを貼ってもらえます。
N先生:
クラスの誰かが進級すると、「いいな~、どうやったら進級できるの?」と刺激を受けます。
私たちは、例えば、「お水から顔を上げたときに、手で拭うのをちょっとがまんしてみたらどうかな?」など、少しだけ先の目標に向けたアドバイスを送ります。
それをクリアし、課題を一つ乗り越えられた時の喜びは、大きな成長につながります。
H先生:
進級の合図として、合格のときは水から上がったタイミングで、コーチが園児の帽子をポン!と外してくださるんです。
私たちは、それを見守りながら、「やったね、進級おめでとう!」と本人以上に喜びを爆発させています。
「本物」を大切に、五感で感じるクッキング
H先生:
毎日のおいしい給食や「クッキング」の時間、野菜の栽培活動など、食育を大切にしている幼稚園です。
N先生:
年長さんになると、「クッキング」で何を作るかというメニュー選びの段階から自分たちで話し合い、買い出しにも出かけます。
今日のクラスでは、「春野菜」をテーマに据えて、春キャベツたっぷりのお好み焼きと、新玉ねぎ、新じゃがいも、タケノコ、アスパラガスなどが入った具沢山のお味噌汁を作りました。
H先生:
お味噌汁の出汁は、本物の鰹節を削って取るんです。なかなか体験できない貴重な時間だと思います。
F先生:
最初は、削った鰹節で取った出汁をそのまま味わってもらいます。
その後、少しだけ塩を加えたものを味わうと、味やうまみの変化が子どもたちにも分かるんですよね。

ある春の日の年長さんの「クッキング」は、春野菜をテーマにしたお好み焼き。
最後の仕上げをみんなで見守り、ソースの焦げる音やにおい、鰹節が熱で踊る様子などを五感で感じます。
(宮崎台幼稚園)
N先生:
子どもたちの舌はすごく敏感なので、今の時期にこそ、「本物の味」に出会ってほしいと考えています。
それが味覚を育てることにつながります。鰹出汁から派生して、コンソメスープや鶏ガラスープも素材から作ったこともあります。
F先生:
その時は、子どもたちが「ブイヨン」について調べてきてくれたんです。
「普段は捨ててしまうような野菜の皮から出汁がとれるらしいから、やってみたい!」と。
実際に作ってみたら、すごくおいしい出汁が取れて、鍋の蓋を開けた一瞬でいい香りがクッキングルームに広がって。そんな瞬間も大切にしたいと思っています。
N先生:
味だけではなく、いい匂いがしてきたなと感じたり、ジュージューと焼ける音を聞いたり…。五感が刺激されると、おいしさも格段に違ってくるんですよね。
N先生:
「クッキング」の活動から派生した、年長さんによる「ふるまいパーティー」も素敵なイベントです。
卒園を間近に控えた年長さんが、お料理やデザートを作り、今までお世話になった先生やお友だちを招待して、パーティーを開くんです。
H先生:
「ふるまいパーティー」は決められた行事ではなく、子どもたちの声を聞いて、「やりたい!」という意見が出たら行います。
自分が年少さん、年中さんの時に、やってもらった思い出が心に残っていると、「自分たちもやりたい!」となることが多いですね。
去年の年長さんは、プリンアラモードを作ってふるまってくれました。
N先生:
パーティに向けて、何を作るかを決めるのも自分たちですし、招待状を出したり、ポスターでお知らせしたり、その方法もみんなでアイデアを出し合い、話し合って決めていくので、自主性や協調性が自然と育まれていきます。
何よりも、周囲の人たちへの感謝の気持ちから生まれるイベントだからこそ、私たち教職員も嬉しい気持ちでいっぱいになります。

「クッキング」で作った料理は、給食の時間にみんなでシェアしていただきます。
(宮崎台幼稚園)
心地よい音とともに、聞く力や集中力を養います
N先生:
宮崎台幼稚園では、日本古来の「わらべうた」を取り入れています。例えば、「げんこつ山のたぬきさん」。
みなさんご存じですよね。それ以外にもたくさんのうたがあって、専任の先生に教えていただいています。
F先生:
「わらべうた」の音階は、日本人に心地よい音というか。シンプルで、耳なじみがある感じなので、子どもたちもすぐに覚えて、楽しんでいます。
N先生:
うたと遊びが組み合わされており、子どもたちは遊びながら自然と音楽的な要素を身につけられます。
また、「歌い終わったら順番に円に沿ってしゃがむ」とか、歌詞の合図で「鬼を交代する」といったさまざまなルールがあるので、普段の自由遊びの場面などでも、ルールを守ることが自然とできるようになります。
ピアノなどは使わず、いわゆるアカペラなので、子どもたちは講師の先生の顔や口の動きなどを集中してしっかり見ていますね。
H先生:
講師の先生が主導してくださって、私たち担任も子どもたちと一緒になって輪に入ります。
そのため、普段の保育中とは違った視点で園児1人ひとりの様子を客観的に観察できる貴重な時間となり、日々の保育の参考にもなっています。
N先生:
もう随分と昔の出来事なのですが・・・。「わらべうた」の時間に、講師の先生から、「2人組を作りましょう」と指示があった際に、私は担任として園児たちをうまくペアにさせようと慌てて間に入って動いてしまったんです。
その瞬間、講師の先生から、「Nちゃん、手を出さない!」とピシャリ!と叱られまして・・・。私も園児と同じ、一人の生徒として「Nちゃん」と呼ばれて(笑)。
先生はすかさず、「お友だちと組めなかった子は円の真ん中に集まるのよ。
そうしたら誰かお友だちがいるからね」と、子どもたちが自分自身の力で解決できるように温かい手立てをきちんと用意してくださっていました。

「わらべうた」を体験することで、日本語や日本の心を大切にすると同時に、
ルールを守って遊ぶことや、先生の話をしっかりと聞く力が身につきます。
(宮崎台幼稚園)
F先生:
講師の先生は、長年幼児教育の現場に携わってこられた大先輩。歌が好きで、「わらべうた」を研究して極めた方なので、教育者として本当に頼りになる存在です。
教員を対象とした「わらべうた」の研修もしてくださっていて、私たちも日々勉強を重ねています。
N先生:
子どもたちが話を聞く姿勢なども、この「わらべうた」を通して養われていると思います。
H先生:
それは日々の生活のあらゆる場面でも役立っていますね。
一斉に活動に移る前、少し全体がザワザワしているなと感じたら、みんなが歌える「わらべうた」をワンフレーズ歌うだけで、落ち着いてこちらに意識を集中させてくれるんです。
私は6年目なのでまだまだ未熟ですが、大切に受け継がれてきた「わらべうた」のよさを繋いでいけるようこれからもがんばって研修を受けていきたいです。