町田こばと幼稚園の先生に聞きました。 園生活でいきるIB教育とは?

IB教育とは。

スイス・ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する教育プログラム、インターナショナルバカロレアのことです。3歳から19歳までを対象に実践する教育のひとつの枠組みで、IB認定校は世界中で5,500校以上あり、当園も2019年、東京の一条校である幼稚園として初めて認定を受けました。実はこれって、すごいことなんです。

IB教育で目指すところ。

目標とするところは国際的な視野をもつ若者の育成です。子どもたちにわかりやすいように、それを具体的な10の学習者像として提示しています。
10の学習者像
・Inquirers 探究する人
・Knowledgeable 知識のある人
・Thinkers 考える人
・Communicators コミュニケーションができる人
・Principled 信念のある人
・Open-minded 心を開く人
・Caring 思いやりのある人
・Risk-takers 挑戦する人
・Balanced バランスのとれた人
・Reflective 振り返りができる人

これを見てもわかるように、世界中のママやパパが「こうなってほしい」という思いと同じなのです。
また、PYP(Primary Years Program:3歳から12歳を対象とした初等教育)では、さまざまな活動を通して特徴、機能、原因、変化、関連、視点、責任の7つの重要概念に触れていきます。ものごとをみる際に重要概念という「レンズ」を通すことで、それぞれの本質を捉えやすくなるんです。

当園には日本人だけでなく、バックグラウンドが日本以外にあるお子さんも多く通っています。でも、健康的な生活をしたいとか、楽しい時間を過ごしたいという思い、一緒に目標を達成した喜びなどに、国や人種の違いなんて影響しません。人々に共通の思いを日々の生活を通して理解していくことが、国際的な視野をもつ若者の育成につながっていくのです。

IB教育では、学ぶべき知識を「私たちは誰なのか」「私たちはどのような時代と場所にいるのか」「私たちはどのように自分たちを表現するのか」「世界はどのような仕組みになっているのか」「私たちは自分たちをどう組織しているのか」「この地球を共有するということ」という6つの「教科を横断したテーマ」に沿って探究します。さらに、言語や社会、算数、美術、理科、体育の6教科を横断的に学びます。

具体的な活動内容。

まだ3歳の年少さんに「概念教育」といっても難しいと思われるのは当然です。そこで当園では「私たちはどのように自分たちを表現するのか」というテーマで学ぶ活動のなかに「自分の好きな色だけ着て登園しよう」という日を設けました。すると「○○ちゃんは黄色が好きなんだ」「●●くんは赤が好きなんだね」と、ひと目で違いがわかります。
町田こばと幼稚園 ビタミンママ

そのままの服装で学年合同のスポーツフェスをしたのですが、その行事の楽しさに着ているものの色の違いは何ら影響しないことがわかります。彼らは緑色を着ていたから楽しかったわけではなく、自分たちはピンク色を着ていたからつまらなかったということはありませんよね。

幼児期の認知能力は、目に見えるもの、実際に触れるものを通して発達していきます。教員は必要な言葉を添えて、体験した「目には見えないこと」を言語化し、子どもたちの「概念」形成を援助していきます。このような経験を小さいうちから何度も繰り返し、一人一人が違うのは当然のこと、それでも一緒に過ごしながら、自己を良い形で発揮できる素晴らしさを活動を通して理解していくんです。
町田こばと幼稚園 ビタミンママ

幼稚園のうちは学習という形で重要概念を学ぶというより、いろいろな子がいて楽しかったし、それぞれが思うことを発言しながら、何とか毎日の小さな課題を解決して、一緒に過ごしたよね、という体験を3年間(多い人は4年間)で重ねてほしいと思っています。

IB教育の根底にあるもの。

いろいろな国の人たちが誤解をしないよう、IB教育は世界共通のフレームワークを使用しています。もし海外に移住することになっても、IB教育を取り入れている学校であれば、継続して学ぶことができるのです。また、ディプロマプログラム(16〜19歳が対象)の卒業資格を取得することにより、国内のみならず海外の有名大学への進学も可能になります。

重要概念や6つのテーマなど、IB教育には本当に、いろいろな要素があります。でも、難しく考える必要はありません。「『命」とは何かを皆がそれぞれの段階で理解して、ひとつしかない地球を大切に生きていきましょう。小さな虫も、植物も、それぞれの居場所がこの地球上にあるのです」。これが根底に流れる考え方だと私は思っています。

自立心を大切にしてきた。

当園ではもともと、自立心を育むというところを大切にしてきました。ここにIB教育が加わることによって、必要に応じて人に頼る、助けを求める、お互い協力していることを自覚できる、そんなふうになればいいなと思っています。そしてこれが、子どもであっても人の役に立てる、何かに貢献しているという概念を知ることにつながると信じています。

IB教育には先述したように、「私たちはどのように自分たちを表現するのか」というテーマがあります。IBを取り入れてからの子どもたちの変化には目を見張るものがあり、きっかけさえあれば自分のことを話したい、という気持ちが見えるため、園生活のなかでたくさんの「きっかけ」を設けています。

今、年長クラスで大流行なのが「自分のエモーションを表現する」ことです。登園したら自分の名札を「悲しい」「楽しい」「寂しい」「ハッピー」などと書かれたところに入れるのです。それを見たまわりのお友だちが「どうしたの?」と聞き、それに対してその子は「なぜかというと、こういうことがあった」、と理由を話します。

その「なぜ?」「なぜかというと」というやりとりのなかで自分の気持ちを相手に伝えたり、人の話を聞いたりという場作りができます。特に発表の場を設けるというわけではなく、日常からそんな意識が芽生え、定着し、話しても良い環境、聞く環境が出来上がっています。だから、当園の子どもたちはみんなおしゃべりです(笑)。

園生活における探究活動。

既存の知識伝達型の教育ではなく、IB教育は自ら興味関心のあることを学んでいく「探究」の姿勢を大切にしています。探究活動を中心とした学びのまとまりを「ユニット」と呼び、各学年1年間で4つユニットに取り組みます。

例えば年少児が2023年度に行った活動を紹介すると、教科の枠を超えたテーマは「私たちはどのように自分を表現するのか」。セントラルアイデアは「遊びを通して様々なコミュニケーションをすることができる」。これを通してコミュニケーションができる人、振り返りができる人、挑戦する人といった学習者像を子ども達のなかにみつけ、それを子どもたちに伝えます。また、活動のなかでIBの設定するATL(スキル)を身につけていきます。

このようなとき教員側もIB教育の良さを感じます。経験の長い、短いに関係なく、IB用語を共通言語で話せるため、「××組の○○ちゃんは、重要とされているスキルのうち、□□が強くて、〜〜がまだまだだよね」というように、共通言語でわかりやすく伝達できるのです。子どもたち一人一人を園全体でしっかり見ることはもちろん、情報の共有も確実に行えるのはIB教育だからこそ、の部分ですね。

他にも活動を紹介しますと、年中児は「この地球を共有すること」というテーマで、植物を育て、自分で収穫した野菜をピザにトッピングして食べたり、魚を目の前で捌いてその場で食べたりして「命」の概念に触れます。このユニットで子どもたちは初めて「命」という言葉を口にするかもしれません。

年長児が取り組んでいるのは光の探究です。「世界はどのような仕組みになっているのか」というテーマのもと、年中時に植物の成長に必要なものとして「光」の存在には触れていますが、さらに園内の「ひかりの広場」で反射や影がどうできるのか、光の性質と対象との関係性などについて遊びを通して 学んでいきます。

ひとりで取り組むこともあれば、マネから始まって学ぶ時期なので人を頼ったり、はたまたクラスに貢献したりと、集団のなかに自分が入る意味を感じながら調べていくことも。
町田こばと幼稚園 ビタミンママ
町田こばと幼稚園 ビタミンママ

探究を通して、知的な活動に満足感を得るだけでなく、リサーチスキルやコミュニケーションスキルが伸びている実感も得ることができます。IB教育の良いところはまさにそこで、今、自分が取り組んでいることを学習者像にしろ、スキルにしろ、「これだよ」と共通言語で表現し、振り返られる点にあると思います。

12月に向けて年中児や年長児は自分たちで「表現」を工夫しながら、学びを劇にしていきます。動きやセリフを暗記する練習ではなく、どうすれば振り付けがよりステキに見えるか、どうするともっと伝わるか、などを実際に練習の映像を見て振り返りながら考えることに重きを置いています。

この学びの過程を保護者のみなさんと共有するので、完成した劇は見応えがあり、そんなわが子の姿に感動する保護者も少なくありません。

保護者へのフィードバック。

IB教育とは具体的にどんなものなのか、それを受けて子どもたちはどう成長しているのか、という疑問や不安を抱く保護者の方がいるのは当然です。そこで当園では1学期に1回、保護者向けワークショップを開催しています。共通言語は保護者のみなさんにもお伝えしていますので、事前にこのユニットではこのスキルなどを伸ばします、と説明するほか、各学期の終わりには子どもたちにポートフォリオを持たせます。

そのなかで「こういう学びをしました」「こんな姿が見られました」「こんな力がついたと思います」などと細かくお伝えすることも忘れません。けれど、一番理想的なのは、子ども自身がそれらの写真を見ながら自分の学びを振り返り、説明することですね。

卒園してからもIB教育を受け続けたい、そんなお声を多くいただいています。そこで近隣のIB認定校をご紹介していますが、IB認定校でなくても、自発的に学ぶ楽しさを知り進学することは、どんな場面でも子どもたちを支え続けると思います。幼児期に受けるIB教育のよさは、よりよい、より平和な世界をつくるための学びの旅へ、大人になっても参加できるきっぷを得られることかもしれません。

お話を伺ったのは

町田こばと幼稚園 園長代理 神蔵かおる先生