『午後の散歩道』に、ようこそ!
ようやく朝晩が過ごしやすく、秋めいてきましたねェ。
窓を開けると、涼しい風と一緒に、虫たちの鳴き声が賑やかに聞こえてくる。
さてついこの間まで、うだるように蒸し暑かった日本の夏。
海の向こうの国はいったいどんなだっただろう。
そんな時、私はスマホのFacebook やAmebaブログを開いて、遠い国に住む友人や知人の投稿記事を楽しんでいる。
ということで今回は、どんな巡り合わせか日本から遠く離れた地で子育てする(した)ママ達を紹介しよう♪
さぁ、地球の裏まで、いってみよう!photo by DonkeyHotey on Visualhunt
1. デンマークのファンキーママ・M
散歩道的『こんなところに日本人』トップバッターは、会社の元同期M。
Mが住んでいるのは北欧の酪農王国デンマークの古い都市オーデンセだ。
ここはアンデルセン生誕の地として名高い、童話の故郷。しかしMはアンデルセンよりメタルロック、メルヘンよりも地を這う昆虫が大好きな、ファンキーな女だった。
「アタシ、会社を辞めてちょっと世界を旅してくるわ」
寿退社がフツーだったバブル期のもっと前に、Mはそう言って退職し、浮かれたOLだった私たちの前から、忽然と姿を消した。
「いつ帰るのか、自分でも決めてないんだって」
ちょっと型にはまらない雰囲気はあったものの、それまで真面目な仕事ぶりで評判だったMに、いったい何が起こったんだ!?
同期入社の仲間たちが、キツネにつままれたような顔で、Mの旅立ちについて語り合っていたのを、今でも覚えている。
それからほどなくして、Mは旅先で知り合ったハンサムなデンマーク人と結婚し、農場主の嫁として暮らすことになった、というニュースが同期中を駆け巡った。
Mと親しかった友人が入手した写真には、幸せそうに笑うMと、ヒョロリと長身で整った顔立ちの北欧人が写っていた。
Mが住んでいるのは、「世界一幸福な国」デンマーク
それから何十年の月日がたっただろうか。
Mの消息を知ったのは、数年前の同期会でのことだ。
Mはあれから離婚してシングルマザーになり、北欧の片隅で逞しく2人の娘を育てている、と友人に聞かされ、「ホラ!」と言ってMのFacebookのプロフィールを見せられた。
私はその場でMに友達申請をした。するとすぐに承認のコールがあり、
「ハーイ、りかちゃんお久~!」とメッセージが入ってきた。
帰りの電車の中で、私はいそいそとスマホを取り出し、Mのデンマークでの暮らしぶりを過去にさかのぼりながら閲覧した。
そこでまず驚いたのは、なんといってもMの家の広さ。
東京や横浜じゃ、猫の額ほどの庭でも○○邸、と呼ばれてしまうのに、オーデンセのMの家のお庭は600㎡!
広々したMの家のお庭。空も高~い◎
広々とした芝生と、桜やリンゴなど、実のなる樹木、納屋の横にズラリと並んだ野菜のプランター。
これだけの庭をキレイに維持するだけで、何人の職人さんが要るんだろう?
しかしFacebookのなかのMは、家の修繕も庭の手入れも、全部一人でやっちゃってるのだ。
ある時は倉庫の軒下に10メートルの雨どいを設置し、ある時は庭中に生えた苔を苔取り耕作機で刈り取り、100リットル袋で45袋もたまった苔を、3往復かけてゴミ処理場に運ぶ。
そんな過酷な重労働を、Mがたった一人で行なっているのにも驚かされるが、彼女がそれを、人生の楽しみの一つとしている様子が、Facebookの小さな窓から伝わってくることに、感動してしまうのである。
Mの大工道具一式。コレ全部使いこなす、Mはガテンな女…♡
デンマークに来てから、語学学校や職業訓練校で学んだMは、英語とデンマーク語を操り、必要な資格を取って、きちんとした生活が維持できる仕事に就いている。
Facebookの窓の向こうで、Mはよく働き、よく遊び、娘たちに細やかな愛情を注いでいる。
そんなMに育てられた長女は大学院でバイオの研究に携わる生物学者の卵で、次女はこの夏、メディア系の高校を卒業したところ。
Mの7月の投稿は、次女と二人の気まま旅。行き先を決めず、車にテントと寝袋を積んで、自然豊かなユトランド半島のあちこちを巡る様子が綴られていた。
寝袋とテントを車に積んで、気ままな母娘旅。素敵だ~♪
牧場を歩き、泉を訪ね、海岸でアザラシの一群と遭遇する二人。
そこで伸び伸びと笑っている次女の可愛らしい笑顔に、日本の片隅にいる私はいちいち『超いいね』を送ってしまうのである。
2. 今日のテヘラン
散歩道的『こんなところに日本人』二番手は中東はイランの首都テヘランで暮らすK2ちゃん。
K2ちゃんは私の友達・Kの妹。姉妹で名前の頭文字がKなので、ここではKとK2ちゃんと呼ぶことにする。
K2ちゃんが商社勤務のご主人と共にテヘランへ移り住んだのは、今から3年前。
イランというと、ヨーロッパとアジアの間にある、石油の出る国。昔のペルシャ。
女の人は皆、頭と顔をスカーフで隠すイスラム教徒の国。
私の乏しい知識では、それぐらいしかイメージできない未知の国だ。
神秘的なイランのモスク。これはホメイニ師の霊廟。
「旦那さんと一緒とはいえ、そんな一筋縄じゃ済まなそうな国に行くなんて、K2ちゃんって度胸あるねぇ!」
姉のKちゃんにそう言うと、
「昔はいつも私の背中にへばりついてるような、引っ込み思案な子だったのに、いつのまにか逞しくなっちゃったのよ~」と笑っていた。
K2ちゃんは、せっかく珍しい国で暮らすことになったので、記念にブログを始めることにしたという。ちなみにFacebookやインスタグラムは通信統制によりアクセスできない(>_<)
Kちゃんからこの情報を仕入れた私はすぐにAmebaのアカウントを取得し、K2ちゃんのテヘラン生活をフォローした。
世界遺産ペルセポリスの「万国の門」は迫力満点!
赴任先の家族には、セキュリティのしっかりした家に、運転手とメイドが用意され、一見、不自由なく生活できそうに思えるが……。
仏教、神道、キリスト教、なんでもOKの日本と違い、ここはお酒も豚肉も女性が髪を見せるのもNGのイスラム教の国。
また国内・国外共に政情不安なイランでは、大規模デモや政府による通信統制など、外国人が暮らすには、かなりの覚悟が必要なのである。
そんな国に、愛するダーリンと共に飛び込んでいったK2ちゃんのブログは、ミステリアスな文化や、そこに暮らす人々のいろんな表情を、飾りのないシンプルなコメントと色とりどりの写真で綴っていて、凄く面白い!
今はマーケットになっている、昔の邸宅の天井。美しい。
K2ちゃんによると、イスラム教にはシーア派とスンニ派があり、イランはシーア派に属しているとのこと。風紀の厳しいスンニ派と違い、シーア派のイランでは、大学に進学する女の子もたくさんいるし、ヘジャブと呼ばれるスカーフで髪を隠せば、車の運転も、外出もOKなんだそう。
日本でも、時々スカーフを頭に巻いた女の子達を見かけるけれど、あの子達はきっとシーア派のイスラム教徒なんだろうなぁ。
「イラン人の半分は、優しさでできている」と言われるそうで、K2ちゃんのブログに登場する現地の人々は、皆 親切で礼儀正しく、だけどどこかアバウトな、フレンドリーな人たちばかりである。
K2ちゃんは持前の愛嬌と、面白い物見たさの好奇心で、その地の人に温かく受け入れられているようだ。
テヘラン富裕層のおもてなし。これは「食前」メインはこの後コースで!
高級スパに行けば、広い浴槽を端から端までクロールで泳いで地元のマダムから拍手喝采を浴び、結婚式に招待されれば、和服姿で花嫁とダンスを踊る。
激しい頭痛に襲われ、病院に入院した時も、現地の「そ、それが治療なの!?」的アバウトな医療体制や、付添いの旦那さんのために用意された豪華なウエルカムデザートなどをつぶさに記録し、ブログにきっちりアップする。
その日のコメントには、
胡麻(ゴマ)、胡桃(クルミ)、胡座(ござ)。「胡」がつくものはペルシャから来たものらしいが、「 胡散臭い 」もペルシャが発祥だと実感。
とあり、異国で体調を崩した不安に立ち向かい、笑いを取って帰ってくるK2ちゃんの明るい強さに心打たれたのである。
K2ちゃんが旦那さんと共に移り住んだ国は、ここイランで4か国目。
彼女は その間に1人娘のM子ちゃんを出産し、今では立派な社会人になっている。
姉の背中にしがみついていた内気な女の子は、神秘に包まれた中東の国で、今日も元気に旦那さんを支え、生活している。
3. 地球の真裏から アブラッソ!
散歩道プレゼンツ、『世界で暮らす日本人妻』ラストは地球の裏側、ブラジルはリオ デジャネイロに暮らすNちゃん。
「Nさんは Rio de Janeiro, Brazilにいます」
Facebookで、その記事をみつけたのは去年の春のこと。
テヘラン在住のK2ちゃん同様、Nちゃんもまた商社マンの妻である。
彼女は結婚以来、数年間を東欧チェコで暮らし、その後旦那さんの転勤により、日本に帰国した。
Facebook友達として繋がっていた私は、日本で元気に幼稚園ライフを送る愛息子S君の成長を楽しく閲覧したものである。
そのNちゃんが、幼稚園を卒園したばかりのS君を連れ、地球の裏側、ブラジルに移住するとは!
リオといえば、コレ!コルコバードのイエス様。
自分の意志とは関係なく、辞令一つで世界の果て、地球の裏にある国で暮らさねばならない。商社マンの妻とは、そんな運命をがっちり受け止め、見知らぬ国で家族を支え暮らしていく、ガッツある女性たちなのである。
Nちゃんの投稿記事は、新生活を始めたS君の様子を中心に、時にはブラジルならではの「あるあるトラブル」を交えながら、私たちに未知の世界での暮らしを見せてくれる。
「午前9時から断水します」と8時52分にインターフォンで知らされるお国柄。
彼女はそんな災難に遭うたびに、
「知らされただけマシなのかも。 そう、ここはブラジル」
と、苦笑いしながら トラブルに対処する、強い女。
カット料金1ドリンク込みの床屋さん。ボトル棚には酒瓶がズラリ!!
一方、現地のアメリカンスクールに入学した甘えん坊でやんちゃなS君は、陽気で活発な子どもたちの雰囲気に馴染めず、初めは毎日泣き暮らしていたという。
Nちゃんは、その様子を見かねたクラスメートの母から、
「何か困ったことがあれば、なんでも言って」と手紙を渡されたりして、どうしたものか、悩んだ時期もあったようだ。
しかし、そんなS君のナーバスな状態を救ったのは、現地のオシャマな女の子たち。
彼女たちは、地球の裏側、神秘の国ニホンからやってきた、サラサラの黒髪に黒い瞳のS君の可愛らしさに、一斉にフォーリン・ラブしちゃったのである。
情熱的なラブレター。♡がいっぱい。そして押し倒してキス!
リオに移住後、ひと月目の投稿では、クラスで女の子たちに取り巻かれ、まるで日本の胸キュン映画みたいに 後ろからギューッとハグされている、東洋のイケメンボーイS君のクールな顔があった。
「息子のモテ期到来。 十分味わっておきなされ。 最初で最後でないことを祈る」
その日のNちゃんのコメントは、予想外の展開に戸惑いながらも、母としてホッと安堵する気持ちが伝わるものだった。
ところで、リオといえばなんといってもカーニバル。
派手な衣装を身に着け、街中で踊り狂う世界一陽気なお祭りに、Nちゃんが参加しないはずはない。
なにしろ彼女はチェコ時代、日本からやってきたNHK『のど自慢大会ヨーロッパ編 in ロンドン』で、商社マンの妻らと共に「マツケンサンバ」を踊った勇者。
私のその期待を、リオのNちゃんは見事に実現してくれていた。
Nちゃん宅から見下ろす、カーニバルの群集。す、凄い(*_*)!!!
「桐島、部活やめるってよ」をもじって
「N、カーニバル出るってよ」というコメントと共に、ゴールドとオレンジの派手派手なコスチュームのNちゃんが、満面の笑顔でFacebookに現れた時、
「Nちゃん、アンタやっぱり…」
私は彼女が地球のどこでだって、自分らしく楽しく暮らしていけるんだ、と確信したのである。
さて、散歩道的『世界で暮らす逞しい母たち』。いかがでしたか?
彼女たちの生き様を、遠く離れた日本の片隅から閲覧するたびに、何があっても、どこに行っても、
「楽しむことは生きる力だ!」 と実感する私である。
Nちゃんのカーニバル コスチューム! 生きる喜びに満ち溢れてる☆