山田りかのハートフルエッセイ

プロフィール:某酒類メーカーに勤務するかたわら、ママ達の日々の暮らしを見つめる勤労作家。年齢不詳。いくつになっても、竜也の前では乙女です。

No.60 秋におすすめ! ビートルズ名曲選♪

『午後の散歩道』に、ようこそ!
ようやく秋になりましたねェ。今年の夏は、猛暑に台風に地震……なんと激しい季節だったことか。
厳しいシーズンを乗り越えた散歩道の街路樹の葉は、今、少しずつ色づき始めている。

こんな秋の日に、心をそっと包み込んでくれるような曲はなんだろう?
私のiPhoneには、年代もジャンルもアーティストもまるっきりバラバラに集めた曲たちが500曲ばかり入っているのだが、そのなかで、何度聴いても絶対に飽きない、黄金のアーティストがいる。それがThe Beatles。私の永遠のお気に入りバンドだ。


子どもの頃から聴いていた Beatles♪

(へぇ。ビートルズって、音楽の教科書に載ってる人たちだよね)
ビタママ世代のお若い方々は、彼らの曲を、大人の懐メロのように思っているかもしれないけれど、BGMや音楽の授業としてじゃなく、「曲」として聴いてみてほしい。
安室ちゃんの引退に涙を流した人にも、ビートルズの音楽はきっと心に届くはず。

ということで今回は、散歩道おすすめのビートルズ名曲選、いってみよう♪

 

1. サージェントペパーズ ロンリーハーツ クラブバンド (1967年 英国)

ビートルズ初心者の皆さんに、その魅力を紹介するなら、まずこの曲、というかアルバムだ。

これは私が人生で初めて自分で買ったアルバム。アルバムとはその時代のLPレコード。26センチ四方のボール紙のケースに収められた大盤のレコードである。

私が物心ついた頃、ビートルズはすでに解散していたけれど、彼らのアルバムは その当時でも、とっても斬新でオシャレなアイテムだった。

画像をググっていただくのが一番てっとり早いのだが、そのアルバムデザインは、ドラムヘッド(大太鼓)とビートルズの4人を中心にして、当時の様々なジャンルの有名人、マリリン・モンローやマーロン・ブランド、ボブ・ディラン、哲学者、サッカー選手、宣教師などが並び、画面の片隅には 日本の福助人形やソニーの小型テレビなどもあって、眺めるだけでなんだか心がザワつくような不思議な気分になってくる。

アルバムの衣装を真似たビートルズのコスプレ。世界中にいます、こういう人たち(笑)
アルバムの衣装を真似たビートルズのコスプレ。
世界中にいます、こういう人たち(笑)
photo by andorus on Visualhunt.com

曲は、ショーの始まり、オーケストラのチューニングの音から、低音のシブい8ビートのイントロが流れ出す。

アルバムは、この曲から全編を通じて、観客が1つのショーを楽しむように仕掛けられ、全部の曲を聴き終った時、まるでコンサートを観終わったような心地よい気分が味わえる。

 

2. ルーシー イン ザ スカイ ウイズ ダイアモンズ (1967年 英国)

長いカタカナの題名が続いて恐縮だが、私のおすすめ2曲目は、澄み渡る秋空を見上げながら聴くのにピッタリなこの曲。
先に挙げたフルバム「サージェント ペパーズ」の3曲目に収録されている名曲だ。

ジョン・レノンの愛息子ジュリアンが、保育園から帰ってきて、大好きな女の子ルーシーの絵を描いた。
「それは、なんの絵?」ジョンが息子に問いかけると、ジュリアンは、
「ルーシーはダイヤモンドを持って、空にいるんだよ」と答えたという。

ルーシーはきっと、こんな女の子♡
ルーシーはきっと、こんな女の子♡

タイトルのイニシャルをつなぐと「LSD」( 麻薬の一種 )。つまりこの曲は麻薬で見た幻覚をイメージしている、などと取り沙汰されたこともあったと聞くが、そんなのはまったくお門違いのうがった意見だと私は思う。

「川に浮かぶボートに乗ってる姿を、想像してごらん」
という歌詞で始まる曲は、小さな男の子が、初めて好きになった女の子を、自分とは違う、可愛くて不思議な生き物のようにみつめている、そんなイメージが浮かぶ、ジョンのピュアな心から生まれた曲なのである。

 

3. エリナ リグビー (1966年 英国)

なんだか物悲しい気分に浸りたい時は、エリナ リグビーを聴いてほしい。
この曲のメロディは、ポールが昔住んでいたロンドンの家の地下室のピアノから生まれたという。

身寄りのない老女エリナ リグビーと孤独な神父マッケンジーを悲劇的に描いた歌詞は、優しい応援ソングで育った人たちにはビックリするようなネガティブ曲。でもそれが、弦楽の美しいメロディとポール マッカートニーの憂いのある歌声に乗ると、木枯らしが吹く歩道のベンチに座って、温かいココアを飲んでいるような気分になれる。

エリナ リグビーのベンチ
リバプールにあるエリナ リグビーのベンチ。「赤い靴の少女」より寂しい!

生きていれば苦しいことも悲しいこともある。いつも笑っていられるわけじゃないのが人生。そんな時は、無理に笑おうとしなくてもいい。 物思いにひたってもいいのさ、と、ポールは歌っているのではないだろうか。

ちなみに、この曲に出てくる二人の老人は、ポールが想像して生み出した架空の人物。
しかし曲がヒットしてから数年後、リヴァ・プールの教会の墓地に、エリナ リグビーという実在の女性のお墓があることをファンの一人が発見し、その後そのお墓は、ビートルズ巡礼の聖地となり、今も訪れる人が絶えないという。
お墓の下のエリナさんも、見ず知らずの若者たちにお参りされて、さぞや戸惑っていることだろう。
 

4. ノルウェイの森 ~ Norwegian Wood ~ (1965年 英国)

なかなかノーベル賞に手が届かない村上春樹の小説の題名にもなったこの曲は、アルバム『ラバー・ソウル』に収録された お洒落でちょっとアンニュイなナンバー。

日本語のタイトル「ノルウェイの森」というのは誤訳で、直訳すると「ノルウェイの(安物の)木材」となるらしいが、村上春樹も「まぁ、それはそれでヨシ」と言っている。

ノルウェイの(本物の)森。曲のイメージは完全にこっち!
ノルウェイの(本物の)森。曲のイメージは完全にこっち!

またサブタイトルは「This Bird Has Flown(鳥は逃げてしまった)」とついているのだが、これはジョンが当時 浮気した女の子にフラれた時の曲だから、と後年 本人が語っている。

聴いてみると、アコースティックギターの乾いた音に、インドの民族楽器シタールのビョ~ンという音色がかぶさり、気だるさと罪深さが潜んでいるようなジョンの歌声が広がっていく。

ある時、可愛い子と出会って、その子の部屋へ行ったら、ノルウェイ製の安い家具が置いてあった。

そんな内容で始まる歌詞は、女の子にフラれた浮気男が、腹いせにその子の家を放火しちゃった、という、実はとんでもない結末がついている曲。

この最後のハチャメチャなオチは、ポールが遊び心でくっつけた、と言われているのだが、そんなオチを、イマジンで世界平和を訴えたジョンが、こんなに軽やかに歌っているところが、なんだか深い秋の夜なのである。
 

5. アビィ・ロードのB面 (1969年 英国)

特に理由もなく、なんとなく良い気分で、なんとなくハッピー。そういう時のことを「アビィ・ロードのB面の気分」とオシャレな大人たちが言っていたのを覚えている。


ロンドンのアビーロード スタジオ。今も世界中のミュージシャンの憧れ!

私がビートルズの魅力を知った時、ビートルズはすでに世界にはいなくなっていたけれど、おこづかいを貯めてやっと手に入れた「アビィ・ロード」のB面にそーっと針を落とした時は、大人の世界に一歩足を踏み入れたような、何ともいえない幸福感に包まれたものである。

大人たちが夢中になっていた「アビィ・ロードのB面」は、ビートルズ一のイケメン・ジョージ ハリスンが親友エリック クラプトンの家の庭に差し込む日の光を浴びて作ったとされる「ヒア カムス ザ サン」で始まり、3曲目の「ユー ネヴァ ギブ ミー ユア マネー」から「ジ エンド」まではビートルズ サウンズの結晶のようなメドレーが続き、ラストはエリザベス女王をおちょくったような、23秒の「ハー マジェスティ」で終わる。

アルバムのA面は「カム トゥギャザー」や「アイ ウォンチュー」というズシンとした曲が並んでいる。そしてレコードを裏返すと、B面のきらめく旋律の流れに、ふぅっと肩の力が抜けて、まるで 心地よい温度のシャワーを浴びるような気分になれるのである。

これが世界一有名なアビーロード前の横断歩道。 渡ってみたーい!
これが世界一有名なアビーロード前の横断歩道。 渡ってみたーい!

私がこのアルバムのなかで一番好きなのは、後に伊坂幸太郎の小説の題名にもなった「ゴールデンスランバー」(黄金のまどろみ)。

ふるさとへの帰り道を思って泣く子に、「泣かなくていいよ、子守唄を唄ってあげるから」と語りかける、とても優しい歌である。
 

6. 愛こそはすべて (1967年 英国)

さて、秋のおすすめビートルズ名曲選、最後を飾るのは、「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」!

プラハにある「ジョンレノンの壁」は自由と平和のシンボル。
プラハにある「ジョンレノンの壁」は自由と平和のシンボル。

できない事はできないし、歌えない曲は歌えない。なんだかいろいろ考え込んでるみたいだけど、答えは簡単。君に必要なのは、「愛」だ~!!

この不朽の名作を、ジョン レノンはたった30分で作ってしまったという。
天のどこかから、降りてきたんだろうなぁ。
だってまるで、ダメダメな人間に向けた、神様のエールみたいな曲なんだもの。

彼はビートルズ解散後も「イマジン」や「ラヴ」など、大事なのは人を愛すること、と歌い続けたけれど、1980年の冬、ニューヨークの自宅前で、狂信的なファンに撃たれ、命を落とした。

NYのセントラルパークにあるイマジンのモザイクは、ジョンの平和への願い。
NYのセントラルパークにあるイマジンのモザイクは、ジョンの平和への願い。

ドリカムの名曲「LOVE LOVE LOVE」のエンディング「Love Love 愛を叫ぼう 愛を呼ぼう」の部分を聴いた時、ああ、これはAll You Need Is Love をオマージュしてるんだなぁ、と思ったものである。

というところで、今回のビートルズ特集、いかがでしたか?

(軟弱な曲ばっかり選んだな……)
ビートルズ世代のおじさま方には、そんなふうに思われるかも。

でも、いいんです! だってここは秋の散歩道。
うちに帰るまでの ほんの少しの時間、気持ちよい音楽にひたっていってくれれば、それでいい。
あなたも私も、一番大事なのは、「愛」だ~!!

1度は渡ってみたい、あの横断歩道♪ Beatles Forever!
1度は渡ってみたい、あの横断歩道♪ Beatles Forever!

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