子どもに内在する能力
子どもは体験を通して学びます。実際にものに触れ、自らの感覚を存分に発揮して対象を捉えます。
また、自ら働きかけ、働き返される中で、何度も何度も考え、思いを巡らせ、試行錯誤し成長していきます。そこでは体を通してさまざまな情報を手に入れ、それを基に考えます。
また、自ら判断し、行為に移していきます。
子どもは、感じ、考え、行為する力を潜在的にもっているのです。
子どもは体験したことを言葉にしていきます。
言葉を使って深く考えていきます。
自らの認識を確かにしていくのです。
体験に言葉が加わり、子どもの学びは一層豊かになっていきます。
社会が大きく変化し、一人一人に思考力や判断力が求められています。
積極的な行動力が求められています。
そうした社会で求められる能力の基礎は、一人一人の子どもに内在する能力です。
存分に能力が発揮できるよう子どもを取り巻く環境を整えることが大切です。
手応えが育てる意欲と自信
環境の中でも、私たち大人の存在を無視するわけにはいきません。
子どもにとっての環境の中には、大人の存在があり、大人がどのように振る舞い、どのように語るかも問われるのです。
とりわけ「励まし支えること」「受け入れ共感すること」などの大人の対応は大切です。
そうした行動と言葉がけが、一人一人の子どもにポジティブな感情を抱かせます。
活動した後に、子ども自身がポジティブな手応え、感覚をもつようになれば、それが次の行為につながります。
これが意欲や自信になるのです。
マジックワードのシャワー
「そうかあ、そんなふうにしたいんだね」
「いいなあ。一緒にやりたいなあ」
こうした言葉を繰り返し、伝えていくことが一人一人の子どものやる気を沸き立たせてくれます。それが意欲になり、子どもの自信を育てていきます。
でも、そうした言葉がうまく言えないこともあります。
そんなときは次のマジックワードを使うと便利です。
「いいね」
「すごいね」
「なるほどね」
共感し、肯定するこうした言葉のシャワーを投げかけ続けることが、子どもの成長を豊かにしていくのです。
お話
國學院大學 人間開発学部 初等教育学科 田村 学(たむら まなぶ)教授
新潟県公立学校教諭、国立教育政策研究所教育課程調査官、文部科学省初等中等教育局視学官、教科調査官などを経て、2017年より現職。
日本生活科・総合的学習教育学会常任理事。主な著書「思考ツールの授業」(小学館)、「カリキュラム・マネジメント入門」「深い学び」(東洋館出版)など。