國學院大學 人間開発学部 健康体育学科
准教授 林 貢一郎(はやし こういちろう)産業技術総合研究所特別研究員
札幌大谷大学専任講師を経て現職。専門は運動生理学、健康科学
5~6月といえば運動会シーズンですね。子どもたちにとっても、親にとっても、運動会は一大イベントといえるでしょう。今回は運動会について考えてみたいと思います。
【運動会の意義とは?】
日本の運動会は、個人戦ではなく紅白に分かれてチームで得点を競うことや、子どもの成長段階に応じた多種多様なプログラムが組まれていること、観客に向けて技や能力を披露する要素が強いということ、開会式・閉会式、入退場の仕方まで時間を使い、少し儀式的要素があることなどが特徴といえるかもしれません。これらの特徴の中で、特に多種多様なプログラムに参加する(練習を含めて)ことにより、さまざまな動きに挑戦できる点や、協調性・我慢強さ・グリット(やり抜く力)といった精神的な成長を促すという点で優れたイベントといえるのではないでしょうか。
【運動会で運動好きになろう】
今、子どもたちの体力や運動意欲は二極化しています。運動能力の差が大きくなり、裾野が広がるとともに、平均値も下がっています。この原因は、主に運動遊びの機会(時間、空間、仲間)の減少によるものです。運動会を通して、運動に積極的に取り組むようになってもらいたいものです。そのために、親子で走ってみる、ダンスを覚えるなど一緒に練習して、楽しみながら子どもの運動経験を増やしてあげることも必要でしょう。
幼少期には、さまざまな種類の運動や、少し複雑な運動を積極的に行うと良いでしょう。例えばダンスなどは、音楽の刺激に合わせて振りを覚え、それを正確に実行する(踊る)能力が求められ、体も頭もしっかりと刺激できるという点で、脳の成長にも有用です。
【運動会にむけて】
運動が得意でない子どもにとっては、運動会は苦痛なもので、運動に対してよりネガティブな意識を芽生えさせるものにもなりかねません。もし、望ましい結果でなかった場合には、「結果」ではなく「過程」や「努力」をほめてあげることや、他人と比較しないことが大切です。もちろん、望ましい結果であった場合も、思い切りほめてあげたいものです。特に幼少期であれば、その運動種目の楽しさなどを強調してあげて、有能感(運動できるという自信)を促すことが必要です。手作りのメダルや表彰状などを作ってあげてもいいでしょう。子どもたちの笑顔が輝く運動会になるといいですね。