國學院大學人間開発学部による「子育てエッセー」
教育が抱えるさまざまな問題と向き合いながら、子どもたちの健やかな成長を考えます。

2018年 No.19 赤ちゃんはたくさん動くことで運動機能が育ちます

運動学的に見た 赤ちゃんの発育発達

子どもは自ら育つ力を持っている
生まれたての赤ちゃんは自ら何もできません。しかし、ヒトとして脳の発達は哺乳類随一の高さを誇ります。

そのため頭部以外の部分が未熟なままで誕生することになったのです。
特に生後約1年は、父母の細やかな世話が必要です。

母親の子宮内という守られた環境から、空気があり重力のある環境下では、手足の少しの動きも、泣くという行動さえも成長に欠かせない体験になります。

栄養摂取、おむつ替え・沐浴などの衛生面、抱っこやあやしは、親子のコミュニケーションには欠かせない機会です。

寝ている時間は長くても、発育発達は確実に進みます。目・耳・鼻・口・手を最大限に使い、あらゆる環境に適応していく力を備えていきます。
十分に動かせてあげよう
周囲の安全確保を行ったうえで、子どもの欲求のまま自由に動かせてあげましょう。
見守ることが重要です。

まだ早い、危ないから、とやめさせることは、子どもの可能性を削いでしまいます。
子どもの気質はそれぞれ異なり、育ちの環境で左右されます。腹ばい姿勢は、子どもの視野を広げます。

ハイハイを獲得すれば、興味のある方へ自ら移動ができます。布団やソファなどの段差は発育発達をむしろ助けます。

足腰の弱ったお年寄りにとっては、わずかな段差の転倒が骨折につながり、寿命を縮める可能性もあります。

しかし、発達途中の赤ちゃんにとっての段差は、新たな運動の獲得の機会にもなります。落下や転倒も経験させておきましょう。

好きなことをできるだけ
段差・壁・家具等を利用して、立ち上がり、伝い歩き、独り歩きと運動能力は高まっていきます。
それに伴い、感情の分化、言葉の発達など徐々に人間らしい部分が見られるようになります。
室内で過ごすことが多かった0歳児から、歩行を獲得する1歳児以降は、行動範囲が屋外にも広がっていきます。

歩けるようになれば、両手が空くため物の移動をはじめ、手を使っての遊びが増えます。
物を食べたり飲んだり、手を洗ったり、衣類を脱ぎ着したりと生活面でのできることも増えてきます。
積み木、お絵かき、散歩、家事の手伝いなど、好きなこと興味のあることは何でもやらせてあげてください。
好きなことをすると集中力が育まれます。そして好きなことを十分に行うことで満足感・充実感が得られます。
そうした経験を経て、また子どもは新たな興味関心を見つけて成長を続けていくことでしょう。

お話

國學院大學 人間開発学部 子ども支援学科 笹田弥生(ささだ やよい) 准教授
2013年より現職。日本体育大学大学院体育学修士修了。5才より体操を始める。1978、80、81年全日本選手権個人優勝。1978、79、81、83年世界選手権代表。1980年モスクワ五輪日本代表(日本不参加)。長女、次女ともに体操選手。

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